2018.08.03
# 恐竜

大発見…! 農民の「バイト発掘」が「恐竜=鳥」説を確立させた

「恐竜大陸をゆく」第1回
安田 峰俊 プロフィール
シノサウロプテリクス
シノサウロプテリクスの復元図 Illustration by Robert Nicholls / Creative Commons


シノサウロプテリクスの発見エピソードは面白い。

1995年、遼寧省西部の北票市的四合屯村の農民・李蔭芳が、山肌に数多く転がっている動植物化石が含まれた岩のなかに、非常に奇妙な動物の化石が含まれているのに気付いた。

李は農閑期に地元の山で化石を探して博物館に売り取ばす、化石ハンターのような副業をおこなっている人物だった。

翌年、李はこの化石を売るために北京にやってきた。まずは中国科学院古脊椎動物与古人類研究所を尋ねたが、反応はいまいち。

そこで化石を中国地質博物館に持っていったところ、館長の季強博士が目の色を変え、6000元(当時のレートで約7万8000円)で購入してくれた。

当時の中国農民の年収以上の金額とはいえ、結果的に見れば、中国地質博物館は驚愕すべき安価で世界的大発見となる化石を買ったことになる。

ただし、売り手の李もさるもの。彼は1匹の恐竜が挟まっていた岩盤を凸部分と凹部分で2枚(押し花の上のページと下のページのようなものだ)保有しており、同一の化石が含まれたもう1枚の岩盤を南京地質古生物研究所に売っていたのだ。結果、研究の初期段階で混乱を招くことにもなった。

シノサウロプテリクスの化石
シノサウロプテリクスの化石 Photo by Getty Images


「シノサウロプテリクス(Sinosauropteryx:中華龍鳥)」の命名者は季博士だ。当初、博士らはこの生物を原始的な鳥類だと考えていた。

だが、やがてアメリカやカナダの古生物学者が続々と北京を訪れて検討を重ね、シノサウロプテリクスは羽毛を持つ、コンプソグナトゥスの仲間(Compsognathidae)の小型獣脚類だと見なされていく。

かねてから仮説としては存在した「鳥=恐竜」説を裏付ける世界的大発見として注目されることとなった。

シノサウロプテリクスについては当初、誤認や捏造を疑う意見も出ていた。だが、数年のうちに同じ遼寧省でコエルロサウルスの仲間(Coelurosauria)であるプロトアルカエオプテリクス(Protarchaeopteryx:原始祖鳥)や、オヴィラプトロサウルスの仲間(Oviraptorosauria)のカウディプテリクス(Caudipteryx :尾羽龍)、テリジノサウルスの仲間(Therizinosauroidea)のベイピアオサウルス(Beipiaosaurus:北票龍)といった多様な種類の羽毛恐竜が相次いで発見され、多くの小型獣脚類が羽毛を持っていたことが化石から裏付けられた。

遼寧省の欲深い化石ハンターの農民の発見をきっかけに、世界の恐竜研究史は決定的なターニングポイントを迎えたのだった。

〈参考文献〉
葉勇「馬門溪龍化石研究総述」
葉勇「自貢地区的蜥脚類恐龍化石」
江山「四川盆地的剣竜類恐竜化石」

季強「我国遼西全身披覆羽毛的奔龍化石的発現及其科学意義」
邢立達「熱河生物群 —朝聖中生代生命演化聖地」

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