寿命が来るまで「資金切れ」にならないための、老後のお金の根本思想

3%で運用して、4%引き出す、が正解
野尻 哲史 プロフィール

もうひとつ、消費者と生涯を通じて向き合ってきませんでした。

「若年層の資産形成が重要だ」とは長らく言われてきました。その一方で、そうして資産形成をした人が、退職してからどうお金と向き合うべきか──この課題について、ほとんど語られずにきてしまいました。

そのため、退職金を受け取った退職者へのアンケートでは、退職金を受け取っているにもかかわらず、「金銭面で不安がある」と回答する方が過半数に達しました。しかも、その人たちの中には、投資のみならず、預金の預け替えなども含めて、「何もしない」という“金縛り状態”にある人が多くみられたのです。

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この状態で退職後の生活に入り、資産の取り崩しをしてしまうと、老後のための資産は一気に減ってしまい、人生の最期を迎える前に枯渇するような事態に陥らないとも限りません。いえ、その可能性は高いと言えます。まるで下り坂を転がり落ちるように。

それでは危険すぎます。ゆっくり階段を下りていくような方法が必要です。そうしたお金との向き合い方がなんとしても必要なのですが、その点について語られることはありませんでした。

 

人生100年の考えが普及した

結局、日本の金融業界は、消費者の声を本当の意味では聞いてこなかったし、消費者に本当に必要な情報を提供することもなかった──と言わざるをえません。

こうした事態を憂慮して、私は2010年に『老後難民──50代夫婦の生き残り術』を刊行し、多くの方が想定している資金ではとても退職後の長い生活をカバーできない、という懸念を世に問いました。

2014年には、その対策として『日本人の4割が老後準備資金0円──老後難民にならない「逆算の資産準備」』を著し、資産の面からライフサイクルを遡って考える「逆算の資産準備」という独自の処方箋を提唱しました。そこでは95歳を人生の終点に、遡って現役時代の退職準備について包括的にまとめています。

長らく、先に述べたような金融教育の欠如部分を指摘し、その処方箋を提示してきた私は、ここにきて急に「人生100年時代」という言葉が流行り始めたことに、「やっとここまできたか……」と複雑な思いでいます。

しかし、これでようやく、30年以上にもなると思われる「退職後」の生活に関して、どう立ち向かうべきか議論がしやすくなりました。その兆候は、メディア取材の増加という形ですでに表れてきています。しかも、これまでとは違った、ボリュームの大きい特集での問い合わせが増えているのです。

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