寿命が来るまで「資金切れ」にならないための、老後のお金の根本思想

3%で運用して、4%引き出す、が正解
野尻 哲史 プロフィール

「運用は3%」「引き出しは4%」

そんな時代の変化を反映してか、現役世代向けの資産形成に偏っていた日本の風潮も、昨今、少し風向きが変わってきたように思います。

2017年11月10日に発表された金融庁の「金融行政方針」でも、また2018年2月16日に閣議決定された「高齢社会対策大綱」でも、「退職世代等に対する金融サービス」として「資産運用と取り崩し」を視野に入れることが明記されました。金融行政方針でも、高齢社会対策大綱でも、これまでなかったことです。2017~18年は、「資産の取り崩し」が“金融サービス”として認知された「元年」と呼べる年になるでしょう。

投資の果実を毎月分配するタイプで、高齢者を中心に「年金の補完」として人気が出た毎月分配型投資信託への世間の風当たりは長らく強いものでした。実際に年金の補完ではなく、「毎月、銀行口座に数字が増えていくことがうれしい」という人の心に訴えかけるもので、そのために投資元本からも分配を出していたことが、「タコ足」配当だなどと批判されました。

 

そもそも退職者は積み上げてきた資産を使って生活の糧にします。これは、米国でも英国でもまったく同じです。そこから資産を引き出すことは、投資信託で元本を引き出す、いわゆる「タコ足」と同じことなのです。

分配金が下がらないことで元本が想定以上に毀損するリスクが大きいなど、「毎月分配型投信」への批判は確かに納得できる部分もあるものの、一方で、引き出すことが前提だという「退職者層の投資の理論を知らない無謀な批判」と言える部分も多く、私は誤解と考えられる部分について、その払拭に努めてきました。

退職してから、生活費をできるだけ抑えて生活することは必要不可欠ですが、資産を取り崩さないわけにはいきません。年金以外に毎月10万円使う生活なら、年間で120万円。その生活を10年続けるためには1200万円、20年では2400万円といった資産が必要です。

仮に2000万円という多額の退職金を受け取っても、全額預金にして、そこから毎月10万円引き出していれば、80歳になる前に資産は消滅します。その後は公的年金だけの生活になり、それこそ「老後難民」になりかねません。

そして、その段階から何か新しい対策を打つことはほとんど不可能。そうなる前に、いかに自分の資産寿命を延ばすかを考えなければなりません。

人生100年時代と言われる今こそ、この問題について考え、準備を進める時期に来ています。いかにうまく資産を減らすかという資産管理の「坂道」をうまく下っていく対策が、私たちの年代がこれからの時代を生き抜いていくための「武器」となります。

結論を先に言いますが、60歳からの15~20年間、75~80歳になるまでのあいだ、「運用は3%」「引き出しは4%」と考えることで、資産の寿命をかなり延ばすことができるようになります。

誰もが公的年金だけでは生活できない時代になってきました。生活資金の不足を補うために、現役時代に蓄えてきた資産を取り崩さなければならなくなります。その時、資産寿命を延ばす取り崩し方を実行できた人と、できなかった人とでは、老後生活に大きな違いができかねません。

「取り崩す」という言葉はどこかネガティブな印象を持ちます。崩すということが持っているマイナスのイメージからなのか、取り崩す=「浪費」のように感じる人もいます。しかし、これは違うのです。

そもそも、資産は使うために積み上げてきたものです。使わなければ意味がありません。資産を作ってきた人生の前半戦に対して、資産を「使う」ことは、もはや働いて勤労収入を得ることも難しくなっていく「老後」という名の人生の後半戦なのです。

資産寿命を少しでも長くする――このことが最も重要なのだということを、まずはご認識ください。

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