2018.10.10
# AI

「働かざる者食うべからず」というクソ真面目な考えはもうすぐ消える

AI時代と憲法27条の改正問題
井上 智洋 プロフィール

労働しなくてもOK、役に立たなくてもOK!

AIが人々の雇用を奪うかどうかという議論が未だに続いているが、AIを含むITによって引き起こされる「IT失業」はアメリカでは既に目に見えて現れている現実だ。

 

AIを含むITが旅行代理店やコールセンターのスタッフ、経理係、弁護士助手などの雇用を減らしている。あるいはまた、アマゾンのようなECサイトの普及が、実店舗の小売店を減少させその雇用を減らしている(21世紀に入ってから、アメリカの全人口に対する小売店の雇用数の割合が著しく減少している)。

2018年にアメリカで、玩具量販店のトイザらスが全店舗閉鎖に追い込まれており、それも「アマゾン・エフェクト」(アマゾン効果)によるものだろうと考えられている。

そうやって雇用を奪われた人達が全て他の職に就ければ、IT失業は一時的なものに留まる。ところが、アメリカでは「労働参加率」が長期的に低下し続けている(「労働参加率」は、15歳以上の人口に占める労働力人口の割合を表す)。

つまり、近年働いている人の割合が徐々に減っていっているのである。アメリカではIT失業は既に長期的かつマクロ的な問題となっている。

日本は現在、景気回復過程にあり、労働参加率は上昇傾向にある。また、ITやAIの導入がアメリカに比べて遅れているので、それらの雇用への影響は軽微に留まっている。

ところが、長期的には日本でもアメリカ同様に雇用が減少していくだろう。その予兆は、金融業に既に現れており、2017年に大手銀行が軒並み行員の削減を発表している。みずほ銀行は、10年かけて全行員の3割にあたる1万9千人を削減するという。
しばらくは、雇用が減少するのは業種でいうと金融業、職種でいうと事務職などに限定されるだろう。だが、AI技術の成熟とその普及により、2030年以降は多くの業種、職種で雇用が減少するようになるものと私は予測している。働くことが当たり前ではない時代がいよいよ本格的に到来するのである。

その頃になっても、強迫観念的な勤労道徳が残っていたら、失業した多くの人々が精神的に追い詰められることになる。そうならないためには、日本人の勤労道徳のシンボルになっている憲法第27条を改正しておく必要がある。

労働しなくてもOK!

役に立たなくてもOK!

全ての人間は生きているだけで尊い。そんな価値観に転換していかなければ、AI時代にこの社会は息詰まるだろう。くだんの障害者殺傷事件が起きた2016年7月にちょうど出版された拙著『人工知能と経済の未来』(文藝春秋)で一番伝えたかったのは、そのような価値観の転換の必要性であった。

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