激増する高齢者のニーズを読み取って成功するために必要なこと
自己表現力チェックテスト・後編ロングセラーとなった『自分をどう表現するか——パフォーマンス学入門』を世に問うたのが1995年。その後、この本は多くの人に受け入れられ、ついに昨年で16刷になっています。
この本を書いたときは、私自身も若かった。花も恥じらう、とは言いませんが、40代でした。その時点で「高齢化」という言葉がなかった。ところがこれからは、14歳以下の人口がどんどん減少するのに反比例して、高齢世代の人口が増えていく。
これは社会の生産性から言ったらあまり望ましくない、と誰しもそんなことを言っているのですが、そういう平凡な言葉を言うようでは、今の時代に勝ち目はないのです。その理由をはっきり、次から見てください。
満たされない欲求は増大する
『タテ社会の人間関係』の著者・中根千枝さんは、日本中の流行語になった「タテ社会」という言葉を発明した人です。「タテ社会」とは、平たく言えば先着順、つまり、会社に先に入った人は新人よりも偉くて、先に生まれた人は若者より偉い。年功序列の給料制度もこんな認識から出ています。
ところがどっこい、この認識は長続きしませんでした。その原因がITやPCの発達です。説明書も見ないで、どんどんパソコンをたたいていく。生まれた時からスマホがあって、小学生でも「ググってみるか」などとつぶやきながらグーグル検索をする。
この傾向に高齢者がついていけない。そうなると、社会は「若さ信仰」になってきます。
若くてIT成金だったら、高齢でコツコツ働いた人よりも所得が格段に大きいのが今の時代です。特に、日本の古い会社社会の中堅どころの男性たちは、若い女性が入社してくると目尻を下げ、仕事ができても年齢が高い女性を煙たがります。
若さ信仰は、そんな変な形でも残っているのです。こんな状況で、高齢者は不思議な2つのアンビバレントな心理状態に追い込まれます。
1つは自尊欲求がまったく満たされないことです。高齢であるというだけで、リスペクトされる率が減ってくる。理由は次の6点です。
1. 心身の機能低下
2. 稼働能力の低下
3. 孤立・孤独
4. 喪失体験の増加
5. 没頭できることの減少
6. 死の不安
その一方で、財布の中身はどうでしょうか。成功した高齢者は、当然それなりの預金や有価証券、不動産などの財産、収入を持っています。そうすると財産はあるのに、社会の動きには取り残されている。
じつはここにビジネスのヒントがあるのです。満たされない欲求はより強くなり、つぶやきになり、悪口になり、一番激しい場合は喧嘩をしたり、ぶん殴るなどの攻撃行動になります。

相手の欲求充足がビジネスになる
高齢者をリスペクトしながら、そのリスペクトが仕事の中にきちんと表れるようなやり方を考えれば、ビジネスは成功します。
「サ高住」と総称される「サービス付き高齢者住宅」などは、このいい例です。地方自治体や国の補助金を使わないと高齢者住宅に入れない層から始まり、1億円から3億円の入居一時金をポンと払える高齢者層がいます。
そこで「高齢格差」が発生します。第1は「所得格差」、第2は「人脈格差」です。
それなりの社会的ステータスをもち、いい仕事をしてきた人は、年齢とともに人脈の質が上がっていきます。
ところが、仕事もあまり大したことができず、財産もなく、向こう三軒両隣と話をして、自分の親戚や同級生くらいと付き合ってきた高齢者は、人脈の質が上がらない。
そこで、何らかのNPO法人を立ち上げるなどという時に、高い人脈を持っている高齢者と組むことが、若者にとっても重要なことになります。お金を出してくれる、人脈を出してくれる、こんな高齢者を放っておくことはないでしょう。
では、その人たちにどんな自己表現をしたらいいのか?
次のように、答えは明らかです。