地球上の生き物のうちの多くが寄生生物
この地球上には約870万種類もの生物が生息しているという。生物同士は食ったり食われたり、また住む場所や食糧をめぐって競い合ったりしている。異なる生物同士が一緒に生活することもあり、それを「共生」という。
共生には複数のタイプがある。お互いが得をする相利共生(例えば、アリはアブラムシから甘い汁をもらい、アブラムシはアリに排せつ物の掃除をしてもらう)、片方だけが得をする片利共生(例えば、ジンベイザメに吸い付いたコバンザメは餌のおこぼれをもらうが、ジンベイザメには得がない)、そして、片方のみが利益を得てもう片方は害を受ける共生もある。この3つめのタイプを「寄生」という。

相利共生の例(アリとアブラムシ、左)と片利共生の例(ジンベイザメとコバンザメ) photo by gettyimages
寄生とは、ある生物が他の生物の体表にとりついて、あるいは体内に潜り込んで、栄養を横取りして生きる現象である。寄生をする生物は他の生物に宿ることによってのみ生存可能で、その生物から離れては生きていけない。
寄生する生物を「寄生生物」、それを受け入れて害を受ける側を「宿主」という。
この寄生という現象は特殊なものと思われがちだが、実は自然界においては非常によくみられる。なにしろ、およそすべての生物が、なんらかの寄生生物の宿主となっている。それどころではなく、1種類の生物にはふつう何種類もの寄生生物が宿っている(寄生生物に寄生する生物すらいる)。
それはつまり、地球上の約870万種もの生物のうちの多くが寄生生物ということである。
種が多いというだけではない。寄生生物の一生(ライフサイクル)も実に多様だ。なかには私たちの想像をはるかに超える戦略を持って寄生し、宿主の行動を変化させるものすらいる。そのほんの一部を紹介しよう。