老後資金を「貯める」前に知っておくべき、2つの大事なおカネの話
貯金がすべてではなかった老後資金の強い味方「退職金」
老後資金は、「死ぬまでにかかるお金-もらえる年金=不足額」で計算できます。

もしかしたら単純に「この不足額を貯めなくてはいけないのか……」と思われたかもしれません。でもそうではありません。必ずしも、「貯める」という方法だけがすべてではないのです。
会社員の方がまず確認すべきは、退職給付制度、いわゆる「退職金」です。
私が退職金額について質問すると、ほとんどの人は答えられません。「退職金なんてないんじゃないの?」という声すら聞きます。
しかし私は、退職金を当てにしないでひたすら貯めるのが素晴らしいとはまったく思いません。そもそも、制度としてしっかり用意されている退職金を見込まないで老後資金を用意するのは至難のわざです。
退職金はゼロでも法律上は問題ありませんので、そういう会社ももちろんありますが、新卒から定年退職まで勤め上げれば3000万円以上という会社も存在しています。
次のデータからも、自分の退職金を確認すべきと感じるはずです。
「平成25年就労条件総合調査結果の概況」(厚生労働省)によると、退職給付制度がある企業が75.5%です。従業員数1000人以上規模の企業では実に93.6%が退職金制度「有り」が実態です。
同じ調査で、退職金の額も発表されています。それによると、最も多い大学卒(管理・事務・技術職)で2156万円、高校卒(管理・事務・技術職)で1965万円、高校卒(現業職)で1484万円となっています。
中小企業でも、69.8%の会社が退職金制度「有り」というデータがあります(2016年12月、東京都産業労働局労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情 平成28年版」、従業員10~300人未満の都内の中小企業対象)。
その額は、大学卒で1128.9万円、高専・短大卒で1030.5万円、高校卒で1082.9万円となっています。
退職給付制度「有り」の場合、これだけの権利があるということです。この金額を無視して人生設計するのもどうかと思います。
退職金水準の高い会社であれば、老後資金をやみくもに貯める必要がないばかりか、極度の不安から解放されることにもつながります。
軽い気持ちで申し込んだ社内の貯蓄制度と退職金だけで老後資金をクリアできてしまいそう、という人も実は山ほどいます。
夫婦の退職金を合わせると、離婚さえしなければクリアという方も存在します。
その場合、お金をもっと自由に使うことができるわけですから、自分や家族や世の中のために、今までよりものびのびと趣味などにお金を使う計画を立てることができます。
逆に退職金がゼロだった場合は、退職金の多い人達とは違う作戦を立てなければ、と新たな自覚をしっかり持つようにしましょう。