アパレル業界は駅ビルやSCにも裏切られた
00年前後には経済の活発化を目論んで規制緩和が乱発されたが、流通業界を一変させたのが00年3月1日に施行された改正借地借家法と6月1日に施行された大店立地法だった。
前者によって定期借家契約が導入されて出店の初期費用が激減した一方(基本家賃の50ヵ月分という差し入れ保証金からほぼ五分の一の敷金に軽減)、営業権が無くなって定借期間後の営業継続が担保されなくなり、店は資産から利用権に変質した。
商業施設側は差し入れ保証金の減額分を共益費や販促費等も合わせた実質家賃に転嫁したから、テナントの売上対比実質家賃負担は三年で4ポイント前後も高騰した。

後者によっては営業時間が自由化されて全国の商業施設はおしなべて2時間ほど延刻され、売上は増えないまま運営コストが肥大し、人手不足が恒常化して店舗運営の質も低下してしまった。
希望の地と思われた駅ビルやSCでも運営コストの上昇に加え、出店初期費用の低下と規制緩和による商業施設の開発ラッシュでオーバーストアが急進。00年から17年でSCの総商業面積は64%も増加し、販売効率は年々落下して00年の65%まで落ち込んだ。

アパレルチェーンは収益を確保すべく調達原価を切り詰め、お値打ち感を損なってさらに売り上げを落とすという悪循環に陥った。商品の価値も販売の質も怪しくなって顧客が離反し始めたところに追い打ちをかけたのが、11年頃からのスマホの普及とECの台頭だった。