品揃えも商品情報も限られる店舗販売から、品揃えも商品情報も格段に豊かで購入の手間も持ち帰る労働も強いないECへと消費は急激に移行し、損益分岐点の高い店舗販売は採算割れに陥って閉店が広がっていった。
百貨店化するECモールと決別する日
運営コストも初期投資も軽く、在庫が多店舗に分散しないからロスも少ないECは店舗販売に代わる希望の地と思われたが、皆が我先に参入して競争が激化し顧客利便が競われるに連れ運営コストが肥大。
流通プラットフォーマーたるECモール事業者も手数料率を年々嵩あげて有力百貨店を上回るほどになり(今や35〜40%と言われる)、『ECモールが百貨店化している』と失望感が広がった。そこに宅配料金の一斉値上げも重なり、ECは他人のプラットフォームに依存する限り低コストとは言えなくなった。
手数料率が高騰する人気ECモール事業者がある一方、仕組みを改善して手数料率を抑制したり利便を高めるECモール事業者もあるが、顧客と在庫、店舗とECを一元一体に運用するにも在庫を抱えないショールーミングストア(発注・決済・物流はECに拠る)に移行するにも自前のECプラットフォームが不可欠で、先行する有力企業はECプラットフォームに投資を集中して店舗網の整理縮小に転じている。
EC受注品の店在庫引き当てと店受け取り・店出荷というZARA(INDITEX社)の決断はその典型で、EC比率が高まった欧州から店舗網の縮小に転じている。

三度もプラットフォーマーに裏切られた挙げ句、アパレル事業者が百貨店や商業施設はもちろんECモールにも見切りを付け、自前プラットフォームに生存を賭けるに至ったのは必然と言うしかあるまい。
アパレル事業者にはその実行スピード、アナログプラットフォーマー(百貨店/商業施設)やデジタルプラットフォーマー(ECモール)にはアパレル事業者を引き止めるコストと利便の革新が問われているのではないか。