銀行にとってフィンテックとは
のちほど、海外金融機関でのFinTechの展開について述べようと思うが、その前に、銀行にとってFinTechをどう捉えればよいかについて少し触れておきたい。

FinTechと一口に言っても、捉え方次第でさまざまな定義ができる。ここではFinTechを活用したサービスの需要と供給面を考えてみよう。
まずは需要面から、つまり、FinTechによって新たに生まれたサービスを誰が利用し、誰にとって便利になるかを考えてみよう。
結論からいえば、それは金融および金融サービスの利用者であり、個人でもあり、サービスによっては法人でもある。当然ながら、新しいサービスは、既存のサービスより便利であったり、使い勝手がよかったりというのでなければ普及もしないし、継続性もない。需要サイドは極めてシンプルである。
では、供給者を考えるとどうだろうか。目の前にあるFinTechが誰にとって有効なのかを考えることで、その分類はしやすくなる。
FinTechというと、よく見聞きするのが、決済や送金といった個人にとって身近な銀行が提供するサービス、ロボット・アドバイザー(ロボアド)とよばれる機械を活用した資産運用といった証券会社が提供する機能、P2Pレンディング(貸出)と呼ばれる消費者ローン、InsurTech(インシュアテック)と呼ばれる保険会社業務に関係する領域、また複雑化する規制に迅速に対応するために金融機関が監督官庁へ円滑に報告をすることに必要となるRegTech(レグテック)というように、FinTechを活用する主語を分類するとより明確となる。
もちろん、これまでのように支店のない銀行であるインターネット銀行、デジタル・バンクといった銀行としてのそもそもの役割もある。
また、これらに加えてビットコインのようなクリプトカレンシー(仮想通貨)は、決済や送金といった一部の金融機関が扱う領域だけが注目されているのではない。ビットコインのコアともいうべきブロックチェーン技術を活用して、投資や資産管理、また契約や税制などにも影響を与える可能性があることから、インフラに近い存在ともいえる。
このように見てくると、FinTechと無関係でいられる金融機関などほとんどない。