私はここまで、サラリーマンという職業が絶滅の危機にあるという話をしてきました。
(まもなく「サラリーマン絶滅社会」を迎えることに気づいてますかhttps://gendai.ismedia.jp/articles/-/57367)
かつての大量生産・大量消費の日本経済において、会社にとって理想的だった画一的な社員=新卒大量一括採用して社内で純粋培養した、一生を会社に尽くしてくれる大量の“企業戦士”が、生産と消費の変化によって“不要”になってきてしまっている、ということです。
一時期はそこそこ売れて話題になったモノやサービスであっても、数年後にははるかに便利ではるかに安いモノやサービスが登場し、一気に売れなくなり、消えて無くなる。そんなことはもはや当たり前で、誰も驚かなくなっている。

次から次へと新しい価値を生み出し、提供し続けなければ、どんな企業であっても、生き残れなくなりました。参入が乗り遅れたために、大企業が何千億という赤字を出し、何万人という人をリストラするなどということが、普通にある国になりました。
サラリーマンは「一生安泰な稼業」だと思っていたら、もうすぐ、切って捨てられるかもしれない“リスク”を抱えていたのです。
社長はこんな残酷なことを考えている
これだけITが発達し、AIやロボットが発達してくると、ITやAIやロボットを使いこなす人だけが必要になってきて、不要な工程がたくさん出てくる。なにせ、社員50人が一ヶ月かけてやっていた業務を、あるシステムによって完全自動化できてしまったりするのです。システムを管理するエンジニアが1人いればいい。
御社の社長は、朝礼で社員に、「みんなで目標達成に向けて頑張ろう!」と叱咤激励しながらも、「こんなに人は要らないよなー……。この部門、いらないなー。ということは、ここの50人、いらないなー。どうしようか……」と困っていたりするのです。
切りたい、だけど切れない。日本の企業はそんなジレンマを抱えています。日本は世界でトップクラスに、社員を手厚く保護する制度を持った国です。会社が業績悪化によりやむなくこの拠点(工場や支店)を畳まなくてはいけない、あるいは、会社に恣意的に不利益を与えた、といった、よほどの理由がない限り、解雇は出来ません。かつては会社に縛り付けて辞めさせないために作っていた数々の制度が、足かせになっている。
しかし、このままでは日本の経済は立ち行かなくなる。そうした現実が見えてきた今、制度を変えなくてはいけない。制度を変えるためには、まず、人々の思想を変えなくてはいけない……!
みなさんはここ数年、なぜ、「働き方改革」がキーワードとなっていると思いますか?
かつて、世界有数の労働時間を誇りながら、世界から「エコノミックアニマル」と揶揄されても、平気でモーレツに働き続けてきた日本国民が、なぜ急に「残業をなくそう!」「ワークライフ・バランスを考えて、自分の時間を大切にしよう!」「リモートワークで自由な働き方を!」と叫びだしたのでしょうか。
少し冷静になって、よく思い返してみてください。これって社員の側が叫びだしたことでしょうか? 違いますよね? 働き方改革を言い出したのは、「企業」であり「国」ではないですか?
働き方改革というのは、自由な働き方を容認させておきながら、企業にとって、自由な雇い方を実現するための“雇い方改革”でもあるのです。いや、本質は「雇い方改革」にあると言っていいでしょう。