動物が次々に死んでいくと、それに寄生している寄生虫も死に絶えます。つまり、絶滅危惧種の動物に棲んでいる寄生虫は、動物が絶滅するのと同時に絶滅する恐れがあるのです。
野生で生きている動物は、多くの寄生虫を持っています。仮に野生の犬を想定しても、フィラリア、回虫、鉤虫、鞭虫など、平均して1種の動物につき3種類以上の寄生虫が棲んでいます。
それに加え、寄生虫に寄生する寄生虫もいるので、地球上の生物の半分は寄生虫と考えてもよいほどなのです。
このように、生物の大半を占めている寄生虫なのに、残念ながらその絶滅についてはまったく危惧されていません。
富山大学の横畑泰志教授は、このように絶滅の恐れのある動物を載せる『レッドデータブック』(環境省編)へ、寄生虫の名前をもっと載せようと働きかけをしています。
寄生虫は現状把握が難しいことで、掲載を却下されることが多いといいますが、活動の成果が実り、レッドデータブックの2013年見直しではようやく3種が追加され、2014年も新たに2種のダニが掲載されました。
日本では、今後少なくとも20種類前後の寄生虫に絶滅の恐れがあるということです。生物多様性が注目されている時代ですから、ぜひもっと多くの人に注目してもらいたいと思っています。
生物の歴史は絶滅の繰り返し
約40億年前に生命がこの地球上に誕生してから、地球の生物は「ビッグ5」と呼ばれる5回の大量絶滅を経験しているといいます。

最大規模の絶滅は、今から約2億5000万年前に起こったとされる3回目のもので、三葉虫などの海の無脊椎動物は約9割、爬類と両生類は種より上位の科のレベルで3分の2以上が失われてしまったそうです。
比べて直近の5回目はいちばん規模が小さい絶滅といわれますが、それでも当時の生物種の半分は消えたと推測されています。