札幌市内にある通信制高校に入学した小祝は、家におカネを入れるために、練習場としても利用していた前出のゴルフ場でアルバイトを始める。本誌記者は、現地で当時の話を聞いた。
「もともと彼女は、中学生で当ゴルフ場の正会員になりました。費用は30万円と、安い金額ではありません。
高校に入ると本人から『昼間にアルバイトをさせてくれませんか』とお願いされました。スタート時の時給は850円。すべてお母さんに渡していたそうです」(支配人の堀内慎二氏)

週に4回は出勤していたという小祝は、朝6時から15時まで客のゴルフバッグをカートに積み込む仕事をしていた。勤務が終了すると、ひとみさんと空いたコースを使って練習、車で自宅まで一緒に帰る毎日を送っていたという。
「勤務態度は非の打ちどころがありません。朝も早いのに、一度も遅刻しませんでしたね。そういった自己管理は昔からできていました。
当時、月の半分は出勤、残り半分は試合の遠征という過酷な日々です。試合のエントリー代や遠征費に加え、練習場の代金を払うとなると月に数十万円はかかります。
楽な生活ではなかったと思います。高校生ながらプロの大会に出ていましたが、ネットオークションで購入した9000円の中古クラブを使っていました。
お母さんは素人でしたから、技術的な指導をしていたわけではありません。どこか気を抜いているとか、気持ちが入っていないとか、そうした甘えが練習中に出た時に厳しく叱っていました。そこは、肉親だからこそわかる部分だと思います」(前出・堀内氏)
冬はゴルフ場が閉鎖してしまうので、その間の4ヵ月間はひとみさんと鹿児島へ行き、現地で仕事をしながら練習したこともあったそうだ。そうして、母とプロを夢見て頑張って来たのだ。
小祝を支えていた家族はひとみさんだけではない。冒頭に登場した祖母の泰子さんもその一人だ。現在、泰子さんは札幌リージェントゴルフ倶楽部のコース内にある茶屋で働いている。
「さくは、目立つのが嫌いなごく普通の子で、家に帰れば年の離れた弟とケンカばかりしています。まだまだ子供ですよ。活躍は嬉しいですし、応援しています。期待もありますが、家族としてはこんな成功が長く続くのか不安というのが本音です。
ひとみは三姉妹の次女。長女も三女も道内に住んでいて、さく親子をフォローしています。長女は、さくが北海道に帰って来た時の送迎役、私と同居している三女は、さくの弟の面倒を見てくれています」