
元経済ヤクザが読み解く、新冷戦時代の「米朝関係」驚きの終着点
なにが起こるか分からない時代に…
北朝鮮は「日本型」で統治する?
オバマ氏が世界に強いたのは、アメリカの国防費削減のための「戦略的忍耐」というガンジーも驚きの方針で、これは、アジア地域を含めた世界の安全保障の混乱に大きく寄与することとなった。だが、アメリカは2013年の習氏の傲慢な「太平洋二分」宣言から「オバマ方針」に見切りをつけ、わずか2年の間に、次世代の国際戦略ビジョンを作り上げた、ということだ。
この時期、トランプ氏は大統領候補としては、不在に近い扱いだった。しかし、国家戦略という大局から考えれば、オバマ氏の次が「トランプ的なものになる」というのは既定路線だった、ということが、時をさかのぼることで改めて確認できたと思う。
米議会が与野党一丸となって対中強硬策をけん引しているのも、習発言があった13年からの5年間、練りに練った国家戦略の結果である。
5年で戦略を練り、いま、中国との「新冷戦」を選択したアメリカだが、旧ソ連との冷戦以後、今日まで頭を悩ませているのが「軍事費」だ。
国際的な軍事研究機関、ストックホルム国際平和研究所が発表したレポートによれば、2017年のアメリカの軍事費は6098億ドルと世界1位で、2位中国の2282憶ドルと比べても大きな開きがある。兵士や労働者への賃金など「人の安い」中国とアメリカを単純に比較することはナンセンスだが、GDP比で見てもアメリカの3.15%に対して中国は1.91%、とその差は大きい。
ただし、その差の根底にあるのが、アメリカが「世界に防衛網を敷いている」のに対して、中国は自国のみを防衛している、という違いだということは見落としてはならない。
「同盟国はアメリカの安全保障の下で経済成長を謳歌している」という不平等感は、トランプ氏がNATO諸国に対して「防衛費はGDPの4%」を提案していることでも明らかだ。今後アメリカは支出を抑制しながら軍事力を維持する――アジア方面については、同盟国経済規模第2位の日本にも大いに支出して欲しい、という意図も明確だと言えよう。
「日本は、対中国に集中して欲しい」というのがアメリカの本音だ。そこで障害となるのが、北朝鮮の核開発である。対中戦略を併せて考えても北朝鮮の核開発に対抗するには「日本の核武装化」が一番簡単な方法だ。
しかし唯一の被爆国である日本は、アメリカに対して核兵器で報復できる権利を持った唯一の国、とみることもできる。これが、アメリカが日本の核武装をしたくてもできない事情だ。100年の恨みをもって報復される可能性について、彼らは決して排除していない。