
元経済ヤクザが読み解く、新冷戦時代の「米朝関係」驚きの終着点
なにが起こるか分からない時代に…
地下経済人とトランプ系企業は動き始めた
アメリカが北朝鮮を日本型モデルで統治しようとしているのではないかという予測は、「4」からも類推できる。「4」の主体は明記されていないものの、米国人捕虜や行方不明兵士の捜索は通常「軍」が行うべきものなのだから、「4」とはつまり、米軍の北朝鮮駐留を示唆しているともとれるのだ。
ここに「3」を加えれば、4項目合意とは実は、「北朝鮮が核を放棄すれば、アメリカはロシアと中国から北朝鮮国民を守る」という「米朝安全保障条約密約」、と読めるのだ。
間もなく、二度目の米朝首脳会談が行われる予定だが、注目すべきは「アメリカが北朝鮮の存続を認め、体制の変換を受け入れる見返りに、アメリカが新たな北朝鮮を守る」というメッセージを世界に発信するかどうか、だ。
さて、この「4項目合意」の真意をいち早く受け取ったのが、日本の地下経済人たちである。
米朝首脳会談翌日には、ある在阪の不動産業者に「柳京ホテルを買わないか?」という申し入れが北朝鮮労働党高官からあったという話が私に伝わってきた。柳京ホテルは、韓国に対抗して北朝鮮が建設を開始したホテルだが、資金不足で工事が止まっており、CNNで「滅びのホテル」と報じられたピラミッド型の建造物だ。
本来は「表の世界の人間」がアクションするべきビジネスチャンスだが、拉致問題を抱える日本にとって北朝鮮と関係することは、コンプライアンス上の問題がある。何より国連や日本独自の制裁措置があるのだから、対北朝鮮投資を目的とした銀行からの資金調達はほぼ不可能、それどころか、社内稟議も通らないだろう。
一方で、暴力団には在日の人が多くいる。裏社会には、基本的にはコンプライアンスなどの障壁も不必要で、「とにかく早く着手しないと利権に与ることができない」ということで地下経済での対北朝鮮ビジネスは一気に雪解けとなった。
北朝鮮には多くの地下資源があるのだが、採取の時に健康被害などが伴うレアメタルの扱いなどは、ヤクザお得意のビジネスだ。暴排条例などで資金調達が難しくなっていることから、組織の垣根を越えて北朝鮮開発資金を共同出資する「ヤクザ・ジョイントベンチャー」を立ち上げる話も聞こえてくる。
突如開けた黄金郷に、在日系の地下経済人たちは口々に「これから北朝鮮への出張ですわ」とえびす顔だ。
こうした地下経済人のほとんどが北京を経由して入国するのだが、一部の「実力者」は中国の瀋陽で北朝鮮の高官とビジネスの話をしてから平壌入りするのが一般的となっている。瀋陽が北朝鮮に物資を横流しする重要拠点であることは言うまでもないが、このことからも北朝鮮の本気度は伝わってくるだろう。
アメリカが本気で北朝鮮の安全を保障したことは、トランプ氏に献金する米国系企業が、北朝鮮進出を模索していることからも明らかだ。まだ報じられていないのだが、アメリカ企業が北朝鮮にカジノ建設をする計画もすでに動き始めている。だからこそ日本の地下経済人たちも必死になっているのだ。
去る10月19日に、アメリカが米韓の合同軍事演習「ビジラント・エース」を中止すると発表したことは、一連の分析を「推理小説」とは片付けられない、具体的な事実といえよう。
米中新冷戦構造構築に向けたアメリカの北朝鮮政策は、急速に進行しているとみて間違いない。