2018.11.04
# インターネット # フェイクニュース

ネット世論操作で敵国を攻撃…フェイクニュースは「兵器」になった

国家の「統制」にも使われている
一田 和樹 プロフィール

世論操作は狙い撃つ、社会の「4つの脆弱性」

フランス政府は2018年8月に『情報操作 デモクラシーへの挑戦(INFORMATION MANIPULATION A Challenge for Our Democracies)』と題するレポートを公開した。世界各国の取材と調査を基にしたフェイクニュースとネット世論操作に関する包括的な資料だ。広範な調査に基づいた実態の把握と分析、そして対処方法の提案まで含まれている。

このレポートの中でネット世論操作が狙う社会の4つの脆弱性が指摘されている。「少数民族の存在」、「内部分裂の容易さ」、「他国との緊張関係」、「脆弱なメディアのエコシステム」である。「脆弱なメディアのエコシステム」とは、国内でゴシップ紙や陰謀論サイトに人気があり、メディア自身もそれを受け入れる倫理的な弱さがある状況である。

 

アメリカはこの点が脆弱でつけ込む隙があり、日本も同様だ。また日本は急速に移民を拡大しつつあり、「少数民族の存在」と「内部分裂の容易さ」も今後さらに拡大することが予想される。つまり日本はこれら4つの脆弱性に当てはまり、悪化することが予想される。

角川新書から11月10日に上梓する『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』は、読者がすでに新しい戦争のまっただ中にいることを自覚させる本である。全体の解説から世界各国と日本の状況をコンパクトにまとめた。

特に近隣のアジア各国の状況については日本語での資料がほとんどないため、関心を持つ方には参考になると思う。インド、インドネシア、フィリピン、カンボジア、ベトナム、マレーシア、台湾、韓国、ミャンマー、タイを取り上げた。

いずれの国でもフェイクニュースとネット世論操作は深刻な問題となっている。一部の国はロシアに指南を受けている可能性もある。

フェイクニュース、ネット世論操作、ハイブリッド戦は、はっきりと目には見えないが、世界のあり方を確実に変えた。ロシア、中国、イランがハイブリッド戦を積極的に繰り広げ、アジア各国では為政者がネット世論操作で国内を統治している。

ヨーロッパやアメリカが効果的な対策を打てていないのは、表現の自由、人権の尊重といった民主主義の根幹部分に踏み込まなければ事態を収拾できないところまできているためである。本書では、ジェイソン・ブレナン氏やユヴァル・ノア・ハラリ氏の論点や、アメリカのアトランタ市周辺で起きている金持ちコミュニティが次々と自治権を獲得する騒動にも触れ、我々の社会が現在抱えている脆弱性を紹介した。

日本も例外ではなく、日本人は否応なくフェイクニュースとネット世論操作の影響を受けている。なにもしなければ無自覚に扇動され、いいように利用される、21世紀に入ってからずっとそうだったように。

日本で行われているネット世論操作については、引き続き次の記事でご紹介する予定である。

本書の執筆にあたって参考にした資料などはおよそ200で、学術論文やNATOやシンクタンクの調査資料も多数含まれる。ほとんどが英語であるが、ご自身で調べる時の手引きになれば幸いである。

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