ビジョンを示せない民主党
反トランプ感情の高まりを考えれば、民主党にとっては2020年にホワイトハウスを奪還するための世論環境は整っている。問題は党内の有力候補が左派(サンダース、ウォーレン、ハリス、ブッカーらの)上院議員に偏っている点である。

これは党内において中道派よりも左派が勢いづいていることの証でもある。今回の中間選挙ではニューヨーク州から下院議員に選出されたオカシオ=コルテス議員のような、民主党の女性議員の躍進が話題になったが、その原動力も左派にある。その背景には、反トランプ感情はもちろんだが、中道派がウォール街(=経済グローバリスト)に寄り過ぎているとの認識がある。左派と中道派の溝は深い。
では、左派の候補者はトランプ大統領に勝利できるのか。「反トランプ」の旗印の元、中道派も最終的には左派の候補者を支持するだろう。しかし、トランプ大統領からすれば「米国の本流から大きく逸脱した社会主義者」とレッテルが貼りやすく、無党派層を遠ざけてしまうかもしれない。
今回の中間選挙ではトランプ大統領が応援したデウィン氏とサンダース上院議員の支援を受けたギラム氏の一騎打ちとなり、まさに「トランプ vs. 民主党左派」の前哨戦の様相を呈した。結果は不確定だが、デウィン氏が勝利宣言している。
僅差であることは確かだが、民主党にとっては「ブルーウェーブ(民主党のシンボルカラーが青であることから、民主党の大勝を意味する)」とは程遠い、不安が残る結果となった。
もう一点、民主党にとっての課題は、「怒れる白人」の票を奪い取りにゆくか、それとも「怒れるマイノリティ」の票を掘り起こすかという点だ。やや単純な言い方をすると、ラストベルト(怒れる白人)で勝負するか、フロリダやノースカロライナ、アリゾナ(怒れるマイノリティ)といった州で勝負するかという点だ。言い換えれば、白人を中心とする「変わらぬ米国」で勝負するか、マイノリティの存在に重きを置く「変わりゆく米国」で勝負するかという問いでもある。
同党のバイデン前副大統領は中道派だが、左派や白人労働者にも一定のアピールはある。知名度も高い。ただ、どうしても「古い」印象は拭えない。他の中道派(クロブチャー、ケイン両上院議員など)は小粒感が否めない。
中間選挙の終盤、民主党は接戦州の応援にオバマ前大統領を担ぎ出した。前大統領が中間選挙で遊説するのは異例だが、まさにオバマ氏ほどの求心力のある存在がほかにいないのが民主党の悩みである。
このことは「党」としてのメッセージの乏しさにもつながる。つまり民主党は「反トランプ」だけで大統領選を戦うつもりなのか。「女性」や「マイノリティ」といった「アイデンティティ・ポリティクス」だけなのか。旧態依然として「再分配」なのか。
それともより大きな、未来につながるビジョンを示すことができるのか。
それは米国のみならず、政治的に冬の時代にある「リベラル」が直面する問題なのかもしれない。