ネットを分断した「BTSの原爆・ナチ問題」とは一体なんだったのか

また噴出した「反日」という不毛な言説
石田 健 プロフィール

「反日」という不毛な言説

ここまで2つのポイントについて考えてきたが、それ以上に問題化するべきは、ネットにおける「反日」言説についてだ。

原爆Tシャツの件では、しばしば「BTSは反日だ」という言説が飛び交っており、これまで3度の韓流ブームのなかで「反日」や「嫌韓」という不毛な言説がたびたび飛び交ってきたことを思い起こさせる。

 

われわれは、他者の内心に対してジャッジメントを下すことはできない。内心でどのような主義・思想を持っていようが、それを第三者が推測して断罪することは不可能だからである。

そのため、原爆Tシャツやナチス・モチーフの衣装をどのような「意図」で選んだかについて議論することに意味はなく、表出した言動こそが問題化されるべきである。

テレビ朝日による「その着用の意図をお尋ねする」という説明は、端的にそのことへの無理解を示している。もし原爆Tシャツを「反日」の意図で着用していたら出演を見送るということであれば、ある思想に基づいて出演の可否を決めることになってしまい、放送局としては大きな問題である。

内心の主義・思想を第三者が推測して批判を向けることは、意味がないだけでなく、不毛な議論を誘引する意味でも望ましくない。

原爆Tシャツ問題について、タレントの田村淳氏はTwitterで「そこまで忌み嫌う国で何故ライブをしたいと思うのか?」と疑問を示している。

この疑問には、「好き嫌いによってビジネスの対象を決めるはずだ」という前提が見えるが、前述したように韓国にとってグローバルにコンテンツを輸出することは大きな課題であり、彼らの内心の「意図」がどうであれ、ファンが存在する場所でビジネスをすることは自然である。

しかしあえてBTSの意図に踏み込むならば、例えばTシャツを着用していたジミンは、メンバーのジョングクとともに2017年に貴重な休暇を利用して、プライベートで日本を訪れていた。

いちファンとしては、2人が東京のよく知る街並みで休みを過ごし、わざわざ旅行動画を撮影・公開する様子を見て嬉しくなったが、客観的に見てもこうした人々が「日本を忌み嫌っている」とは言い難いだろう。

BTSが「日本を忌み嫌っている」と憶測することは自由だが、原爆Tシャツ=反日という安直な理解をもとに第三者の心情を推測して議論することが許されるならば、不毛な水掛け論が延々と続いてしまう。

「日本のことを好きな人だけが日本でビジネスをするべきだ」という考えが傲慢であることは言うまでもないが、「反日」という不毛な言説が、日韓関係だけでなくわれわれの社会の分断を誘引することも考えなくてはならない。

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