今日の夕飯、何にしよう?
冷蔵庫の中には、トマト、タマネギ、ジャガイモ、マッシュルーム……そうだ、ハヤシライスにしよう!
う~む、トマトがまだちょっと青いけど……仕方ないか。
あぁ~、タマネギ切ってたら涙が…‥。
このジャガイモ、芽が出ちゃってる! イチイチとるの面倒くさいんだよなぁ。
あれ? マッシュルームの色悪くない? 茶色くても問題ないよね?
あ! お米も炊かないと! ……しまった、もうなくなりそう。お米高いんだよなぁ。今年は不作なの?
……とぼやきながら、ハヤシライスを作るこんな日が、数年後には過去の話になっているかもしれません。
ここに挙げた5つの食材(トマト、タマネギ、ジャガイモ、マッシュルーム、コメ)は、どれもゲノム編集技術を用いて品種改良が進められている作物の一例です。
消費者メリットを意識した開発が進む
ここに挙げた食材のうち、最も実用化が近いと言われているのが、マッシュルームです。
時間がたったり、手荒く扱ったりすると茶色く変色し、商品価値が落ちて廃棄されてしまうマッシュルーム。ゲノム編集により「白いままのマッシュルーム」がアメリカで開発されています。
同じくアメリカではデュポン社が、ゲノム編集によりデンプンの組成を改変した「ワキシーコーン」を2021年までに上市予定であると公表しています。ゲノム編集農作物で最初に商品化される可能性が高いとみられています。

冒頭の5つの食材のうち、マッシュルーム以外は、日本で開発が進んでいるものです。
たとえばトマトでは、筑波大学の江面浩氏らが、高血圧の予防につながる成分、そして癒しの成分としても知られるGABA(ギャバ)を多く蓄積させることに成功しています。
他にも、完熟後の収穫でも長距離輸送に耐えられる「甘くて長持ちするトマト」や、「切っても涙の出ないタマネギ」、「毒のないジャガイモ」、収量アップを目指した「多収イネ」などの開発も進んでいます。
これらはいずれも、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「次世代農林水産業創造技術」によるもので、農業のスマート化(省力化・高生産化)や、農林水産物の高付加価値化を目指すものとして研究開発が行われています。
農作物だけでなく、ゲノム編集の対象は動物にも及びます。養殖中の衝突死を防ぐ「おとなしいマグロ」や、筋肉量を増やした「肉厚のマダイ」、卵アレルギーの原因物質を抑えた「アレルギー対策卵」を産むニワトリなど、続々と開発が進んでいます。