利益率が低下する要因は、これらのコスト増だけではありません。
巨大IT企業はこれまでM&A以外では大規模な投資をする経験が乏しかったので、従来から大規模投資をしてきた大企業のような厳格さは持ち合わせていないようです。そのため、アマゾンが広告事業に新規に参入し、アップルが動画配信に事業の拡大を目指すなど、すでに強力なライバルがいる事業に巨額に資金を投じることによって、利益率の低下が避けられないのは仕方がない状況にあるのです。
さらに、巨大IT企業が無形資産のデータで稼ぎまくっているのに正当な税金を支払っていないとの批判が高まっているなか、先進各国では新たな課税も検討されています。
今までの国際課税ルールでは、国内に支店や工場といった恒久的な施設がない限り、外国企業の売り上げや利益には課税できないという原則がありました。ところが今や、欧州ではIT企業に対して利益ではなく売上高に課税する「デジタル課税」案が浮上しているのです。

傍若無人を認めない…! 狭まる「巨大IT包囲網」
実際に、英国が他の国々に先駆けるかたちで、大手のIT企業を対象にしたデジタル課税を2020年4月から導入すると決定しています。大手のIT企業が英国の消費者から稼いだ売上高に対して、一律に2%の税率で課税するというのです。
英国のデジタル課税の導入は、EUがデジタル課税を前向きに進める契機になるはずでしょうし、G20の議論にも大きな影響を与えることになるでしょう。利益率という尺度とは異なりますが、デジタル課税がIT企業の税引き後の利益を抑える要因になるのは間違いありません。
そこへ持ってきて、巨大IT企業がデータを寡占している立場を乱用し、取引先に不利な取引を強いている状況も改められる環境が整備されつつあります。
我が国でも経済産業省が実施した大掛かりな調査によれば、日本の中小企業は巨大IT企業との取引において、不利な取引条件を押しつけられるという実態が明らかになっています。経済産業省の調査を踏まえ、公正取引委員会も問題のある取引や契約がないかを調べる方針だといいます。
何も日本に限らず、多くの国々でIT企業の傍若無人さが認められない状況になっていくことになりそうです。