2018.12.18

この先、「実家」をどう処するかを考えていない人へ

家も土地も売れない時代です
野澤 千絵 プロフィール

私たち一人ひとりが住まいを終活することは、何も個人的な問題を解決するためではない。まちづくりについても、非常に重要な役割を担っている。

特別付録は取り外して保存しよう!(photo by iStock)

これまでと変わらず、今後も相続を機にした「問題先送り空き家化」が横行し、住まいやその土地が次の所有者・利用者にバトンタッチされなければ、これまで税金で公共施設やインフラを整えてきたまちは、空き家・空き地がまだら状に点在するスカスカの状態になり、まちの魅力や価値までも低下させてしまいかねない。

とりわけ、救急医療、警察の緊急対応、水道の提供、道路の維持管理・清掃、ゴミ回収といった公共サービスが成り立たない、スーパーなどの生活に必要な施設が撤退する、自動運転やAI技術が進展したとしても、宅配サービス、訪問介護、在宅医療などの提供に影響が出る、といった由々しき事態が懸念される。

 

これは何も地方都市や、交通の利便性が悪い大都市の「超郊外」住宅地の問題にとどまらず、大都市でもまったく同様である。

私たち一人ひとりが住まいを終活することは、まちの世代交代を促し、ひいては次世代にとっても、引き継ぎたいと思えるまちの価値を生み出していく、つまり、今あるまちに新たな所有者・利用者が流入できる「素地」をつくることに他ならない。

人口が減少しても持続可能な「衰えぬ街」をつくるためにも、私たちが今、「老いた家」と正面から向き合わなくてはならないのである。

読書人の雑誌『本』(2019年1月号)より

老いた家 衰えぬ街』は発売即重版が決定!

(*1) 本推計方法は、新庄徹「名古屋市における高齢化による世帯の消滅と市街地への影響について」、公益財団法人名古屋まちづくり公社名古屋都市センター研究報告書No.130(2018年3月)を参照した。
(*2) 本稿の世帯数(一般世帯)は、住民基本台帳ではなく、国勢調査のデータをもとにした。なお、国勢調査と住民基本台帳の世帯数データが異なっているのは、住民票の届出場所と実際に住んでいる場所が一致しない場合があること、国勢調査では、寮・寄宿舎・社会施設は棟ごとにまとめて「施設等の世帯」として1世帯とする場合があるなど、世帯の把握方法が異なるためである。
(*3) 住宅着工統計(国土交通省)より。
(*4) 建築物除却統計(国土交通省)より。災害による滅失戸数も含む。

のざわ・ちえ/兵庫県生まれ。1996年、大阪大学大学院修士課程修了後、ゼネコン勤務を経て、2002年、東京大学大学院博士課程修了。2015年より東洋大学理工学部建築学科教授。専門は、都市計画・まちづくり。著書に、『老いる家 崩れる街──住宅過剰社会の末路』(講談社現代新書)などがある。

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