「遺言書」をおススメしたが…
両親、祖父母も亡くなっていて、きょうだいもいないI様の場合は、「相続人がいない」状況です。
最近では高齢の方の婚活も流行っていますので、そうしたいい出会いがあり、配偶者ができれば、老後の不安もなくなり、相続の不安も解消されるのですが、そうしたこともなければ、ご自分の意思を決めて、遺言書に託すようにしましょうと公正証書遺言をおススメしていました。
ところが、60代はまだまだ元気で、相続も先のこととI様は思っておられて、「もう少し考えがまとまってから」というお返事でした。
きょうだいがいない場合、財産を託そうと考える対象は、やはり親族のことが多く、いとこやその子どもたちになります。日頃、行き来をしていれば託しやすいのですが、それほど親しい付き合いをしていないこともあると簡単には決められないのが現実です。
警察からの電話
I様に建てていただいた賃貸住宅は、ずっと満室で、退去もほとんどなく、賃貸事業は安定していました。毎月の家賃は指定口座に振り込まれます。毎月の賃料の明細書を担当者が手渡しをしていますが、旅行で不在にすることもあるので、特段変わったことがなければ、郵送でよいと言われていましたので、担当者も数か月はお会いできていなかったといいます。
しかし、それまではI様はお元気で、お変わりないと聞いていました。それなのに、12月のはじめの警察からの電話でI様が亡くなったことを知らされたのです。Iさまは70歳になられたばかりでした。
年間440憶円が国庫に入る現実
相続人は原則、配偶者と子どもです。両方いないおひとり様の場合は両親か祖父母が相続人です。I様のように、両親も祖父母も亡くなっていて、しかもきょうだいもいない、1人っ子の場合は、相続人がいないことになります。最近では、こうした人が増えているのです。
相続人のいない財産は、国に帰属するため、国のものになりますが、最近では年間約440億円もの財産が国に帰属している状況です。
身の回りのお世話をしたり、関わりのあった親族などは、家庭裁判所に「特別縁故者」として財産の一部をもらいたいという申請をすることはできますが、そもそも財産管理人になる弁護士の選任などが必要で手続きには100万円以上の費用がかかり、時間もかかります。
そうすることで亡くなった人の財産がすべてもらえるかというと、認めてもらえるのは財産のほんの一部ですので、結局は大部分が国のものになるのです。
おひとりさま、1人っ子が自分の意思を生かすには、「遺言書」の作成が必須となります。そうすることで親族へも迷惑や手間をかけずに済むのです。