学名の前に漢字の名前が付けられる
恐竜の中国語名は通常、「Tyrannosaurus」→「暴龍」のように、ラテン語の学名の意味をもとに漢字が当てはめられる形で名付けられる。
ただし中国人研究者が発見した恐竜の場合、多くの場合は先に漢字名が考案され、それからラテン語の学名が考えられていく例が多いようだ。
これは「青島龍」(Tsintaosaurus;チンタオサウルス)や「黄河巨竜」(Huanghetitan;ファンへティタン)のように地名に基づくものが多いのだが、なかには「帝龍」(Dilong;ディロング)や「冠龍」(Guanlong;グアンロン)のように象徴的なイメージや外見的特徴に基づく命名もある。
種名の部分では「許氏禄豊龍」(Lufengosaurus huenei;ルーフェンゴサウルス・フェネイ)のように、発掘や研究の関係者の名前を冠して「○○氏〜」と付けられる例も少なくない。

中国の恐竜は、まずは漢字名ありきなのだ。
今回は新年の第1回目の記事というわけで、中国恐竜たちのなかでも特に属名と種名の漢字表記がおめでたそうな恐竜たちを紹介していくことにしよう。
古地名×李白=フアヤンゴサウルス?
フアヤンゴサウルス・タイバイー(Huayangosaurus taibaii)は、漢字名が「太白華陽龍」と、極めておめでたい名前の中国恐竜である。

発掘された化石の状態がよかったためか、中国恐竜のなかでは比較的メジャーな存在であり、日本の海洋堂の「チョコラザウルス」シリーズでフィギュア化も果たしている(なお、仲間のトゥオジャンゴサウルスについては本連載の過去記事でも紹介している)。
フアヤンゴサウルスは、ジュラ紀中期に生息した体長4メートル、体高1.5メートルほどの原始的な剣竜の仲間だ。背中の骨の板は比較的小さく、尾の先に4本のスパイク、さらに両肩に1対のスパイクがあった。
脳は小さく、体型からしても動きは鈍重だっただろうと言われている。
この恐竜が発掘されたのは、ジュラ紀の古生物の産地として知られる四川省自貢の大山舖だ。1980年代前半におこなわれた調査を通じて、同じくジュラ紀中期に生息した竜脚類のシュノサウルス(Shunosaurus;蜀龍)らと同じ地層から見つかった。