「右肩上がりの呪い」を解く
面白いもので、自分にとっていま本質的ではない友人関係や郵便物を整理し始めたら、有意義な新しい出会いが増えてきました。何かを捨てれば何かを得られるというのは本当です。

惰性で続けることほどばからしいことはありません。世の中にはもっともっと素晴らしい出会いが待っています。
しかし、受け皿がいっぱいになっているとそれができなくなる。余計なものを捨ててこそ、受け入れるスペースが生まれ、新しいビジネスチャンスを獲得できるのです。
最後に、私が本当にやめて良かったと思っていることをお伝えします。
それは、「業績向上へのこだわり」です。
私は「右肩上がりの呪い」と呼んでいます。
会社はどうしても売上至上主義に陥ってしまいます。対前期比、対前年比、対前年同月比。こうした指標にがんじがらめになり、売上は伸ばして当然、それこそがビジネスマンの努めだと考えてしまいます。
でも、本当にそうでしょうか。
私は赤字が続き、倒産という最悪の事態を覚悟した経験をしているので、いっとき売上が落ちてもかまわないと考えています。
売上がずっと落ち続け、赤字を垂れ流すのは問題ですが、1度や2度落ちる程度なら大きな問題ではないはずです。
どんな会社にも波があります。自分たちの力ではどうしようもない外的環境の変化で売上ダウンを余儀なくされることもあります。永遠の右肩上がりなどは不可能です。
売上は落ちるときには落ちるのです。それよりも、売上にしがみつくばかりに余計なことをするほうがマイナスです。
チョコレート店の場合、夏場に売上が大幅に落ちるため、この時期にアイスクリームやゼリーをラインナップに加えて自ら忙しくしている店が大半です。お客様が少ないからと、割引セールを開催して、なんとか数字を上げようとする店もたくさんあります。
しかし、それは店にとって本当にプラスでしょうか。焦って数字を作るより、その時間を使って本質的なことに向き合い、次の一手を考えたほうがよほど建設的ではないでしょうか。
ケンズカフェ東京はいまでは真夏でも売上は落ちません。今年の夏は猛暑でしたが、ガトーショコラの販売は絶好調。2ヶ月待ちが続いています。売上が落ちてもいいと構えて、ケンズカフェ東京にとって何が本質的で何がプラスになるのかを最優先に考え行動してきた結果です。
右肩上がりの業績に縛られるのは、余計なことでしかありません。決算数字が前期より下がること、通帳残高が減少することに、いちいち落ち込むのはやめましょう。
ジャンプする前にはしゃがむ必要があるのです。