23区「階層社会」の実態
学歴に関する『国勢調査』のデータは、10年に一度の大調査に限られるため、現時点では2010年のものが一番新しい。

大卒者(大学院を含み、短大を除く)の割合が23区で最も高いのは千代田区(53.4%)。以下、港区(52.2%)、文京区(51.5%)と続き、この3区は大卒者が過半を占める。ちなみに45%以上にまで対象を広げると、中央、世田谷、渋谷、杉並、目黒の各区が加わり、高所得のまちが勢揃いする。
一方、低い方はやはり東部3区で、足立区(19.9%)、葛飾区(23.6%)、江戸川区(24.9%)の順。荒川、墨田、板橋、北を加えた7区が20%台に並び、こちらも所得と一致する。東京では、所得と学歴によって上流、中流、下流が明快に分かれた階層社会が形成されている。
では、子どもの大学進学率はどうなのだろうか。『学校基本調査』では、高校の所在地別に大学等(こちらは短大を含む)への進学率が公表されている(図表)。

大きな構造は、親の学歴と概ね変わりがない。そんな中で目につくのが、世田谷区が11位、中央区が15位にランクを下げていることだ。逆に親の学歴水準はそれほど高くないにもかかわらず、子どもの進学率が高いのが北区で、世田谷区を上回る9位にランクインする。
実は大学進学率は、公立高校に比べて私立高校の方がはるかに高い。そのため私立高校の集積状況によって、進学率の数値は変わってくる。中央区は公立高校の進学率は8位で、高校生全体の進学率が低いのは私立高校が少ないためだ。逆に公立高校の進学率が19位と低い北区は、進学率の高い私立高校が多いことから全体の数値が高くなっている。
世田谷区は公立高校の進学率が18位、私立高校が13位と、親の学歴の割にはどちらもそれほど高くない。成績がいい子は、区外の有名進学校に通うのだろうか。
さて、東部3区はというと、足立区と葛飾区は高校生全体でみても、公立高校に限ってみても21位ないしは22位の低ランクに甘んじている。江戸川区は高校生全体では下位グループに属するが、公立高校は10位と結構頑張っている。
親の学歴は低くても、子どもは授業料が安い公立高校に通って大学を目指す。暗い話題が続いた東部3区に一筋の光が差し込んだようなニュースだといえなくもない。
余談ながら、大学進学率最下位は荒川区。東大合格者数ダントツの1位を誇り続けるあの開成高校がある荒川区だ。まあ、開成高校の生徒は、オール首都圏なのだろうが。