水も空気も補給不要の宇宙旅行へ! 「水の98%再生」が視野に

月・惑星探査に向けた日本独自の技術
宇宙航空研究開発機構 プロフィール

伊藤 サバティエ反応には大きなエネルギーが必要なのですが、適切な触媒で高効率化できます。例えばNASAの取り組みでは反応温度は600℃ほどですが、いま日本ではこれを約200℃まで下げる試みを行っています。

またメタン分解も通常では1000℃以上の高温が必要ですが、やはり触媒により約500℃で反応させる方法を開発しています。

日本のお家芸ともいえる高度な触媒技術で、高効率の空気再生システムを実現できる。非常に難しい課題ではありますが、ようやく実用化に近づいてきたといえます。

水がふんだんに使える環境を作る

──将来的にどのような形で使われる可能性がありますか?

伊藤 直近の展望として、2022〜2023年頃からの建設開始が想定されている月周回軌道上の宇宙ステーションへのECLSS提供があります。

環境制御・生命維持は有人での宇宙活動の根幹ですから、国際共同の宇宙開発に日本が大きく貢献する新しい機会です。コンパクト性や省エネルギー性、消耗品の少なさやメンテナンス性の良さ、さらに多くの工業製品で勝ち得ているメイド・イン・ジャパンの高い信頼性をセールスポイントとして、強くアピールしていきたいと思います。

ISS現在のISSの水再生システムは総重量が1.5トンにおよぶ Photo by NASA

──将来の有人火星ミッションなどでもキー技術となりますね。地上での水再生などにも応用可能でしょうか?

伊藤 宇宙で必要とされる、尿を再生して飲み水にするような高度な水再生が地上で必要になるケースはまれですが、災害時など極限状況での活用はあり得るかもしれません。

今後、技術開発が進んでコスト低減が進めば、この技術が貢献できる局面が増えてくる可能性はあります。

宇宙のトイレ現在のISSでは宇宙飛行士の貴重な作業時間を割いてトイレのメンテナンスを行わなくてはならない Photo by JAXA / NASA

──最後に、夢をお聞かせ下さい。

伊藤 現在の宇宙生活では水の使用制限が非常に厳しいですが、私どもが試みている処理が完全にできれば、食べ物に含まれる水が人間を通じて回収される分だけ水が増えます。このような技術によって、水がふんだんに使える宇宙生活環境を作るのが夢です。将来に実現する宇宙観光旅行では、重要なことだと思います。

また、使いづらいといわれる宇宙ステーションのトイレも快適にしたいです。無重量状態のトイレには地上での介護のための排泄処理技術が参考になるかもしれません。トイレ掃除の手間が減らせられれば宇宙飛行士の活動時間が増やせ、ミッションの成果につながるでしょう。

水・空気再生からトイレまでの総合的な「次世代ECLSS」が、宇宙活動推進の大きな力になると考えています。

「JAXA's」No.071より転載〉
記事提供:JAXA

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