立ち姿勢と同じ腰椎にするために
2000年以降になるとMRIが臨床の現場でも多く使われるようになり、2006年には、北米の放射線医師のバシールらのグループが、MRIを用いてさまざまな座り姿勢による椎間板への負荷を計測しました。
その結果、股関節の角度が90度になるように座ったときより、後ろにもたれかかって股関節が135度くらいになるように座ったとき(ほぼリクライニング状態)のほうが椎間板に負担がないということが明らかになり、センセーションを巻き起こしました。これはかなりリラックスした、いわば「社長座り」です。こんな格好で新入社員が仕事をしていたら、やる気がないように見えて上司に怒られてしまいそうです。
しかしながら、その後、股関節が135度くらいになる椅子にもたれかかった座り姿勢は、いくら心地よくてもその状態で長時間作業したり、素早く立ち上がったりすることは不可能である、という論争へと発展しました。
そして現在は、後ろへもたれかかるのではなく、うまく後ろでサポートをしながら股関節を110度程度開き、背骨のカーブを保つ座り方をするほうが現実的であるという認識が広まってきています。
この世界的な研究の流れをふまえ、仕事場で実際に作業しやすい背筋を立てた姿勢として私が考案したのが、「ゼロポジ座り」なのです。
一見、よい姿勢に見える90度座りのときより、110度くらいに股関節を開いて座ったときのほうが、腰椎が立っているときとほぼ同じ自然なカーブで骨盤の上にまっすぐにのっているのがわかると思います。
疲れない、痛まない体になる
先ほど、アライメントが正しい状態とは、体にあるたくさんの関節の中心に体重がのることだとお話ししました。
これは、体がどちらかの方向に過度に引っ張られたりせずまっすぐに立ち、無理な力を入れる必要がない“エフォートレス”な状態であるため疲れや痛みが生じにくいのです。
股関節を110度に開くゼロポジ座りなら、骨盤が傾かず、その上に腰椎がまっすぐにのって、頭も前に出にくくなり、正しい位置になります。正にアライメントが整ったエフォートレスな状態になるので、疲れや痛みが生じにくいのです。
また、股関節が開いていると、座ったり立ったりする動作がラクで腰に負担がかかりません。フットワークも軽くなると思います。
さらに将来の脊柱管狭窄症や、腰椎すべり症などの病気予防にもつながります。
効果として以下のものが挙げられます。
2 体が引き締まり、太りにくくなる
3 精神状態が安定し、心が整う
4 集中力が高まり、仕事の効率がアップ
5 見た目の印象がよくなる
6 ポジティブ思考になり、自分に自信がつく
メンタル面に関して補足すると、姿勢をよくして表情をよくするだけで思考がポジティブになったという研究データがあります。また、姿勢をよくするだけで、自信に満ち溢れ、ビジネスにおいて臆病さがなくなったということも報告されています。これは、自律神経や脳の血流がよくなることが関係していると思われますが、ゼロポジ座りも、これと同じ効果が得られると考えられます。
体に痛みや疲れがないため、自然と気持ちが前向きになるはずですし、自信に満ち溢れ、堂々としている人は、安心感があり、話の説得力も増すので、座って行う商談などもまとまりやすくなったりと、仕事の成果も上がりやすくなるでしょう。
体の痛みに苦しんでいる人、自分に自信を持てない人は、まず座り方から変えてみましょう。