2019.02.06

地域金融の未来を拓くのは、「面倒なお金」かもしれない

「共感」が古い金融の常識を変えていく
橋本 卓典 プロフィール

すでに動き始めた金融機関もある

「ふるさと納税」は定着したが、地方にとって、つまるところ「人」ではなく「お金・財源」が目当てに過ぎない。

真の意味での地域の課題解決に「人」が欠かせないのだとしたら、eumo革命の方が理想に近いはずだ。

金銭の量ではなく、共感の量に価値を見いだす非等価交換の経済圏は、これまでの等価交換の「常識」で諦めていた、地域での創業、移住、貧困、教育、高齢者支援などの地域の課題を解決する可能性を秘めているとは言えないだろうか。

「バカげている?」―。

筆者が問いかけているのは、テクノロジーや若者の価値観の変化を目の当たりにしても、変わろうとしない銀行員ではない。

クルマは買わないが、共感したクラウドファンディングには喜んで手を差し伸べる若い世代だ。共感で仕事や副業を選び始めた世代だ。「理念で飯が食えるか」と、開き直ってきた大人を恥ずかしく思う世代だ。

「未来の金融」の可能性に気づいた一部の金融機関は動き始めた。芸者にも将来性を見極めてローンを出すことで知られる第一勧業信用組合は、eumoと業務提携した第一号の金融機関だ。

「金融機関の規模にはまったくこだわりません。地域の課題解決に真剣に取り組む金融機関こそ、共に手を携えて、未来を変えたい」

と、話す新井。今年9月、古巣の鎌倉投信の受益者(個人投資家)向けに電子ポイントの実証実験を目指すという。時代を吹き始めた共感の風に銀行は乗れるだろうか。

共感世代から「サヨナラ」を突きつけられないためには、「ワクワク」「わざわざ」を無駄だと切り捨てる古い算盤を一度、脇に置いてみたらどうだろう。

橋本 卓典 (はしもと たくのり)  1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。09年から2年間、広島支局に勤務。金融を軸足に幅広い経済ニュースを追う。15年から2度目の金融庁担当。16年から資産運用業界も担当し、金融を中心に取材。『捨てられる銀行』シリーズ(講談社現代新書)は累計23万部を突破。2月13日、その第3弾『捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む』を上梓する。著書はほかに『金融排除』(幻冬舎新書)がある。

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