2019.02.09
# 恐竜

海の古生物の代表選手が「怪しい化石の代名詞」に転落した哀しい話

恐竜大陸をゆく ケイチョウサウルス編
安田 峰俊 プロフィール

北京原人と三畳紀の偽竜類

ケイチョウサウルスは2億4000万年ほど前の三畳紀の海に生息した、体長15~30センチほどの小さな生き物だった。首と尾が長く、5本の指がある足を持ち(後輩格に当たる首長竜は足がヒレ状に進化したが、偽龍類にはまだ立派な足がある)、鋭い歯が生えた細長い頭があった。

ケイチョウサウルスケイチョウサウルスの復元図 Illustration by Getty Images

ケイチョウサウルスの発見は、中国全体の化石発見史のなかでもかなり早期である1957年5月だ。

地質部陳列館(中国地質博物館の前身)の研究者だった胡承志(Hu Chengzhi)が、黔西南プイ族ミャオ族自治州興義市(現在の地名)頂效镇大寨村浪慕山で8カケラの化石を採集し、中国古生物学の泰斗・中国科学院古脊椎動物研究所の楊鍾健(C.C.Young、本連載ではもはやお馴染みだ)博士のもとへと送ったのだ。

楊博士は恐竜とも他のトカゲとも異なるこの化石を仔細に研究し、この生き物が未知の偽竜類で、パキプレウロサウルスの仲間(Pachypleurosauridae)であると断定。翌年に発表した論文のなかで、発見者の胡承志の名前を記念して「ケイチョウサウルス・フイ(胡氏貴州龍:Keichousaurus hui)」と名付けることとなる。

余談ながら、ケイチョウサウルスの化石発見者である胡承志自身も有名な古生物研究者で、戦前期に北京原人の頭骨のレプリカ作成を手がけたことで知られている。

北京原人北京原人の頭骨のレプリカ Photo by Getty Images

化石のオリジナルは日中戦争中に消失してしまったため、その後の北京原人研究は胡承志のレプリカをベースとしておこなわれてきた。

彼の中国古生物学への貢献も非常に大きい。

どんどん見つかった海棲爬虫類化石たち

その後、中国の研究者たちはケイチョウサウルスが見つかった地層から、多くの魚類をはじめとした海洋生物の化石を採集していく。

1995年にはそのうち226件が国家の珍貴文物(日本で言う天然記念物に相当)の指定を受け、中国国内で大きく報じられたことで、貴州省は三畳紀の海洋生物化石が豊富に出土する土地として広く知られることになった。

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