2019.02.09
# 恐竜

海の古生物の代表選手が「怪しい化石の代名詞」に転落した哀しい話

恐竜大陸をゆく ケイチョウサウルス編
安田 峰俊 プロフィール

2008年4月には中国国営通信社の新華社が、貴州省と隣接する雲南省曲靖市富源県・羅平県などで、地元農民が化石偽造に狂奔する様子を伝えている。

こちらでも、本物の地層から取り出した岩盤にケイチョウサウルスを彫刻したニセ化石の「加工工場」の存在が伝えられ、製造者から直接買い取った場合の価格は500元~数万元(約8000円~50万円程度)まで。

「ここで数万元で買い付けたニセ化石は、(省都の)昆明の市場では十数万元で売れるぞ」といった地元住民の発言が紹介された。

2010年夏には、社会問題に果敢に突っ込む調査報道で有名だった広東省の新聞『南方都市報』の雑誌版が、貴州関嶺化石群国家地質公園などからケイチョウサウルスなどの盗掘化石を15年間にわたり持ち出している密売業者の実態を暴露した。

近年の中国では政治的な締め付けもあって報道が減り、昨今の状況には不明な点も多いが、おそらくこうした市場は現在でも存在し続けていると見られる。

ちなみに中国のネットショッピングサイト『タオバオ』で探してみたところ、ケイチョウサウルスの「化石標本」(本物かは不明)が7500元(約12万2000万円)で出品されていた。

南方都市報ケイチョウサウルスの盗掘問題を報じる『南方都市報』雑誌版。タイトルは「化石の殤(早逝)」と痛々しい。中国のニュースポータルサイト『新浪網』掲載記事より

うさんくさい古生物の代名詞になってしまった…

中国では富裕層を中心に、山の奇石や古生物化石を縁起物として家庭内に飾る趣味を持つ人が多い。

手頃な体長で全身化石もしばしば見つかる、ケイチョウサウルスをはじめとした三畳紀の小型海棲生物(魚類やカメなども含む)は、そうした需要にぴったりと合致してしまったのだ。

  貴州省の高速道路の恵水サービスエリアにて。2018年5月、筆者がたまたま訪れた際、ケイチョウサウルスを称する化石(またはニセ化石)がここの売店でも販売されていた Photo by Minetoshi Yasuda

ちなみに、ケイチョウサウルスの盗掘やニセ化石の問題は、われわれ日本人とも無縁ではない。

2018年10月16日に放送された『開運 なんでも鑑定団』(テレビ東京系列)では、一般視聴者が「ケイチョウサウルスの化石」とされる岩盤を出品。自己評価額は100万円だったのだが、オープン・ザ・プライスの結果はたった1万円であった。つまり、貴州省か雲南省あたりの職人が作ったニセ化石をつかまされていたわけだ。

中国で古生物の化石が発掘されるのは、国内では相対的に貧困地域とされる場所が多く、化石にまつわるアンダーグラウンドな産業が地元の経済を潤しているという現実がある。

中国の化石文化にまつわる負の面を知る上でも、ケイチョウサウルスは興味深い存在だと言えるだろう。

〈参考〉
杨锺健「貴州新発見的腫肋龍化石」『古脊椎動物学報』2 (2-3)号、1958年 
王立亭「貴州中晚三畳世海生爬行動物研究概况」『貴州地質』62号、2000年 h
「黔西南|貴州龍動物群:中国化石宝庫中的一顆明珠」『人民網』

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