「エリートほどバカである」残念な国家の末路
非エリートよインテリジェンスを鍛えよ「世界史の奇跡・日本」が生まれた理由
日本は、権力と財力と知力が比例していないのが美徳だった。
たとえば、江戸時代。権力は武士が、財力は田舎の地主と商人が、知力は各層の向学心がある教養市民層が持っていた。
これが他の国なら、権力と財力を特権階級が独占し、それ以外の人々は字も読めない。だからこそ一部のエリートが国を支えなければならず、その一部エリートは極端に優秀にならざるをえない。そうしなければ国が亡びるからだ。
我が国の場合は、まったく違った歴史をたどった。
世界史の奇跡と言われる明治維新。旗本八万旗と言われた体制側の公務員は、何の役にも立たなかった。亡国の危機を救ったのは、名もなき下級武士たちだった。薩長の武士たちが古く腐った江戸幕府を倒して新政府を樹立し、世界の誰にも媚びない強くて賢い国――大日本帝国を打ち立てていく。
鎖国下でも自分の頭で考え、世界を見ることはできる
明治維新は、ある日突然はじまったのではない。それ以前の江戸時代の教育の賜物だ。
元和偃武と言われる平和の時代が到来し戦国の騒乱は過去の遺物と化した。そうした平和な元禄繚乱の時代、学問が盛んとなった。幕府の定めた官学である朱子学に対する自由な批判が学問を発展させ、中国崇拝の学問は勢いを消した。
享保に、漢訳洋書輸入の禁が緩和された。キリスト教に関する書物以外の洋書の輸入が認められたのだ。これに日本の教養市民層は、貪るように飛びついた。そして、日本はペリー来航の百年前に、西洋の知識をも知っていた。キリスト教を理解しないで洋書など読めるはずがない。
鎖国の時世、確かにInformation(生情報)は限られていたが、Intelligence(知見)は無限大だ。江戸の知識人たちは、自分の頭で物を考え、世界を見ていた。だから、ペリーの黒船がやってきたとき、「あれをやればいいのだ!」と欣喜雀躍した。

黒船とは、白人の軍事力と経済力と科学技術力の粋である。多くの有色人種は、黒船を見た瞬間に、「勝てない!」とあきらめた。相手の心を折るのが、砲艦外交の狙いである。