2019.02.19

「違法ダウンロードの範囲拡大」に潜む、重大な問題点

世界的に見ても異例な広範囲
藤本由香里 プロフィール

著作権法は文化の発展に寄与すべきでは

もう一つ、赤松氏が言及したのが、「価値ある創作活動が行われ得るといった理由により,違法にアップロードされた著作物の利用を正当化することには疑義がある」とする、文化庁の見解だ。上記の一文は、<パブリックコメントで提出された個別事例を受けた事務局としての考え方>という文化庁が出した、団体や個人から寄せられたパブコメへの反論集の中にある。

この文書は「~には疑義がある」という語尾のオンパレードで、パブリックコメントで寄せられたさまざまな危惧や異論を「そんなことを考慮する必要はない」とすべて却下していくのであるが(そのこと自体、この改正がまず「結論ありき」で進んでいることを示している)、中でも最も驚くべきものが前述の一文である。

著作権法第一条には、この法律を定める目的として「この法律は、<中略>文化の発展に寄与することを目的とする」とある。にもかかわらず、文化庁はこの著作権法の立法趣旨を真っ向から否定しているのだ。

 

参議院議員会館での院内集会の当日、情報法制研究所(JILIS)からも「ダウンロード違法化の全著作物拡大に対する懸念表明と提言の発表」という反対声明と提言が出されたが、その中でも、今回の改正は「保護法益・利益に立ち戻った原理的な考察を欠く」「対象範囲を限定しないことによる副作用の指摘を無視している」と指摘されており、この声明を紹介するITmediaNEWSの記事の見出しはズバリ、<静止画ダウンロード違法化案「目的を見失っている」>である。この改正案はそもそも、著作権法の目的そのものから逸脱しているのだ。

もちろん、文化庁の言う「違法にアップロードされた著作物」が漫画村のような「完全に違法な海賊版」を指すのだとしたら、それは確かに免責の理由にはならない。「創作の糧にするのなら、ちゃんと買って読め」ということになるだろう。

Twitterの画像引用も違法に?

しかし今回の改正は、そうした「ブラック」なものだけでなく、引用の要件が不完全な転載だったり、二次創作だったりといった、「グレー」なものも広範に含んでいる。

たとえばTwitterのような短文のSNSへの画像の添付は、「引用は、引用する方が主で、引用されるものが従でなければならない」という引用の第一要件を満たさない可能性が高い。しかしTwitterでは時に、非常に貴重な資料や図像が流れてくるのはごぞんじの通りである。またTwitterのアイコンのアニメアイコン等も、ダウンロードに含まれていれば、著作権侵害だと問題になる可能性がある。

〔PHOTO〕iStock

加えて、情報法制研究所が指摘する通り、論文の盗用のような研究不正の証拠とするために当該の不正論文をダウンロードして保存することも、前述の<事務局としての考え方>によれば違法となる。著作権侵害をしているものをダウンロードしたからである。これでは研究不正の検証など一切行えない

そうしたことを文化庁は明確に認識していながら、「違法な部分は外してダウンロードすればいい」「~には疑義がある」と、すべての議論を切って捨てているのだ。

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