2019.02.25

サラリーマンから資本家になるために、「会計思考」を身につけなさい

よりよく生きるには必須の知識です
三戸 政和 プロフィール

資金繰り(キャッシュフロー)は生命線

会社を買うために必要なのは、まず「値付け」です。会社の価値は「純資産+営業利益3年から5年分」が相場です。そこで、この「純資産」と「営業利益」について説明することから始めます。これだけで、ビジネスに最低限必要な会計の体系的な理解ができるはずです。

次に企業のチェックポイントは、「資金繰り(キャッシュフロー)」です。

Twitterで、「営業利益」と「営業キャッシュフロー(CF)」の違いが説明できるかフォロワーにアンケートを取ったところ、半数以上が「説明できない」という回答でした。ビジネスにとって、キャッシュフローは絶対的な生命線です。これを多くのビジネスマンが理解すれば、国家全体の底上げにつながるのではないかと思うくらいです。

テレビドラマ「半沢直樹」の冒頭、町工場を経営する主人公の父が、メインバンクの融資引き揚げによって資金繰りに行き詰まり、自死したシーンを鮮烈に覚えている方は多いのではないでしょうか。「晴れた時に傘を貸し、雨が降ったら傘を返させる」とも言われる銀行ですが、実際の企業経営においても同様のことは起こりえます。

「黒字倒産」という言葉もあるように、事業の良し悪しとは関係なく、資金が詰まれば経営破綻します。時に、業容が拡大すればするほど資金が行き詰まって倒産することもあるのが会社です。

 

資金繰りに詰まって突然死しないためには、十分な血液(資金)を循環させておく必要があります。あるいは、いつでも銀行から輸血できるように準備しておくことです。そのためには、常に借り入れをしておくことが重要です。

「借入金」に慣れていないサラリーマン的な感覚からすると、「借入金は良くないもの」との印象をお持ちかと思います。しかし、こと企業経営において借入金は高評価すべきものでもあります。

借金できる人は「信用のある人」

これを体現しているのが、ソフトバンクの孫正義会長でしょう。ソフトバンクグループ(持ち株会社)は、携帯事業を運営している子会社のソフトバンクを2018年12月19日に上場させました。国内では過去最大の2.6兆円を調達し、初値を基に計算した時価総額は約7兆円にのぼります。

しかし、12年前の2006年に携帯事業の母体となるボーダフォン日本法人を買収した時の金額は、1兆7500億円でした。しかもソフトバンクが買収の自己資金として出したのは、たったの3200億円で、残りの1兆4300億円はすべて借入金でまかないました。

そして、12年の時を経て、株式市場に上場させることで新規の株式発行を行い、2.6兆円の現金を調達することになりました。簡単に言えば、3200億円出して2.6兆円が手に入ったということです。そのうえ、株式もまだ保有しています。

この錬金術のような手法は、いったい何でしょうか。

答えを先に言ってしまえば、銀行からの借入の方法と使い方(間接金融の市場)と、株式会社の概念と証券市場(直接金融の市場)に精通しているからです。孫さんが、ただ事業センスがあるだけの経営者であれば、ここまで大きな資金を掴んで投資し、リターンを出すことはできません。日本でもっともファイナンスに精通した経営者であるがゆえにできたことなのです。

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多くの人が誤解していますが、借入ができるのは、その人に信用があるからです。

同じ年収のサラリーマンで、貯金がある人と、貯金どころか借入のある人がいた時に、前者は良くて、後者は悪いという風潮がありますよね。しかし、この両者は、どちらが幸せな人生を歩んでいると言えるでしょうか。

お金の使い方によりますが、良い使い方をしているならば、私は、借入のある人のほうが幸せだと思っています。なぜなら、信用があることはもちろん、たくさんの経験をそのお金で買うことができているからです。貯金をしている人は、私に言わせれば、お金を塩漬けにして、得られるはずの経験を見送ってきた人なのです。

ちなみに私自身は、稼いだお金をすべて何かの体験に使っているため、貯金はまったくありません。

借入金のリスクの話に戻ると、今は、「経営者保証に関するガイドライン」というものが制定されています。会社の借入金が返済できなくなっても、経営者がドラマ「半沢直樹」の主人公の父のように自死に追い込まれるようなことはなく、一定の要件を満たせば、自己破産すらしなくてもいいようになっています。

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