驚きの米朝決裂…!日・米・北・韓「最も得した国」はどこか

東アジアでこの後起きること

明暗はくっきりと分かれた

ベトナムのハノイで開かれていた米国と北朝鮮の2回目の首脳会談は2月28日、合意に至らず、決裂した。勝利したのは米国のトランプ大統領、敗者は金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長である。次に何が起きるのか。

 

記者会見したトランプ氏によれば、正恩氏は非核化に向けた十分な措置を示さなかった一方、経済制裁の完全な解除を要求し、これをトランプ氏が拒否して決裂した。会談前には、トランプ氏が「非核化を急がない」と繰り返し、正恩氏も非核化の意思を示すなど、楽観的な雰囲気が流れていた。

フタを開けてみれば、正恩氏の強気は完全に裏目に出てしまった。大統領が「とてつもないことが起きるだろう」などと終始、楽観的な見通しを語っていたので、トランプ政権の宥和姿勢を読み違えた、とも言える。

そもそも2回目の首脳会談を要求したのは、正恩氏の側だ。獲得目標があったからこそ会談を求めたのに、何も成果が得られないのでは、どう見ても負けである。正恩氏には大きな痛手になった。

正恩氏は制裁の完全解除を要求したために、逆に「制裁が効いている」こともバレてしまった。今回の米朝首脳会談は国内でも大々的に報じていた。それが会談決裂では、指導力に疑問符が付くのも避けられない。

大統領は前回のシンガポール会談で、北朝鮮が米国批判を強めたのを見て、いったん会談をキャンセルし、その後、相手が頭を下げてきたので、会談に応じた経緯がある。今回はハノイまで出かけてテーブルについたうえで、正恩氏に冷水を浴びせた形である。

普通の米国民からすると、アジアの貧しい小国が米国大統領に約束した話を平気で裏切った。それを大統領が今回、平手打ちしたような話である。トランプ氏の人気は高まるかもしれない。国内では、元側近証言で苦しい立場に立たされていた。大統領は帰途のエアフォース1(大統領専用機)機中で、上機嫌で側近たちとシャンパンを飲んだのではないか。

正恩氏に次ぐ2番目の敗者は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領だ。文氏は昨年秋、英国やフランスなど国連安全保障理事会の常任理事国を歴訪し、懸命に北朝鮮に対する制裁緩和を働きかけてきた。正恩氏の忠実な「代理人」だった。

文氏は金剛山観光と開城工業団地の操業再開を狙っていたが、正恩氏がそれ以上の要求をしたために、すべて水の泡になってしまった。トランプ氏は「オマエが言ってきた話と全然、違うじゃないか」と思っただろう。これでは、トランプ氏にも合わせる顔がない。

文氏が親北容共路線であるのは、いまやだれもが承知しているが、正恩氏と十分な意思疎通ができているのかどうか、も怪しくなった。綿密に打ち合わせしていたなら、過大な要求をすれば、会談が決裂する可能性も想定できたはずだ。

今回の結末を見る限り、文大統領は正恩氏の単なる「使い走り」程度なのかもしれない。

 
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