離脱日が近づいているが…
イギリスの欧州連合(EU)離脱問題は3月29日の離脱日が迫る中で一層混沌としている。
2年の交渉期限が過ぎようとしているのに、最悪のシナリオとされる「合意なき離脱」から、仕切り直しとなる2度目の国民投票まで、想定し得るほぼ全ての選択肢が今も消えていないのが現状だ。
余談ではあるが、イギリス人とは「傍から見るとばかばかしいことを真剣にとことんやる国民」だとつくづく思う。これは、8年間のイギリス生活で得た筆者の実感である。
他の重要課題はそっちのけで膨大な政治的、社会的なエネルギーを費やし、その先に何がもたらされるのか? 大山鳴動して鼠一匹、ならまだいいが、単なる自傷行為に終わらないか。
筆者は議会で延々と採決が繰り返される状況に少々うんざりしながらも、一方で「ひょっとしたら」という期待感も持っている。
何のことか?
歴史的な実績である。

イギリスが科学や思想の分野で人類に数多の貢献をし、議会制民主主義を育み、サッカーやラグビーなど数々の国際的な人気スポーツを生み出してきたのも、この「ばかばかしいことを真剣にやる国民性」のたまものだろう。
現在、世界が様々な面で行き詰まっているのは明らかだ。
その混迷する世界の中で、迷走を続けているブレグジット騒動も将来的には何かポジティブなものをもたらすのではないかという期待感である。
ホンダのイギリスでの生産中止発表(2月19日)を受けた大騒ぎでも見られるように、世の中の出来事がますます短期的な経済の損得勘定だけで評価される傾向を強める中、大きな出来事を見つめる際には時に歴史的、長期的な視点に立つことも必要ではないだろうか。
ブレグジット騒動が、持続可能な「開かれた国家」とは何か、社会が多様性を深める中で民主主義の政治制度とはどうあるべきか、グローバリゼーションの中での国家主権の在り方とは、など現代世界が抱え込んだ様々な問題への解を求めて議論を生んでいるのもまた現実なのである。