「アンダーズ サロン」は、さまざまな分野の芸術を通して、ゲストたちが情熱や想像力を分かち合い、クリエイティブな思考や才能を生み出す場。刺激的な体験を提供する参加型ソーシャルイベントで、世界中のアンダーズで開催されています。

2018年6月1日(金)にアンダーズ 東京で開かれた「アンダーズ サロン」には 、世界で活躍するフランス人写真家のフィリップ・マリニグさんが登場。彼の写真集『SECRET MOMENTS OF MAIKOS』に序文を寄せた、シャネル代表で小説家でもあるリシャール・コラスさんを特別ゲストに迎えたトークセッションと、舞妓と芸妓による華麗なパフォーマンスが披露されました。

ユーモア溢れる会話に
創造性を刺激される

左から、司会のジャスティン・パターソンさん、フィリップ・マリニグさん、リシャール・コラスさん.

写真集『SECRET MOMENTS OF MAIKOS』には、舞妓という京都を中心とする地域に根付いた文化の裏側に迫り、舞妓がくつろぐ姿や移動中のタクシー内で話す様子など、普段見ることはできない瞬間が収められています。アンダーズ サロンでは、同書の制作秘話について語られました。

 
被写体がどんなものであっても
自然な状態を写す

フィリップ(以下):「私は2011年から京都に住んでいて、もちろん舞妓や芸妓のことは知っていたのですが、最初は被写体として街で撮るくらいでした。舞妓の世界に踏み込みたい、パーソナルな写真も撮りたいとは思っていたけれど、『SECRET MOMENTS OF MAIKOS』の写真が撮れる関係になるまで多くの苦労がありました。舞妓や芸妓と一緒に時間を過ごすことによって、普段では見られないような表情、一瞬を撮ることができるようになりました」

:「色んな被写体がある京都ですが、舞妓のミステリアスな部分に魅力を感じ、その秘密をひもときたいと思いました。観光客が増えたことで、私が知る7年の間でも京都は変わってきています。あまり変わりすぎる前に、現在の京都や舞妓を世界に広めたいと思いました」

 
枠にとらわれないクリエイティブを
追い求める

コラス(以下):「2011年より前ですが、彼は共通の友人のところでナミビアという国の写真を展示していました。ちょうどシャネルのネクサスホールで写真展をやるために常に新しいカメラマンを求めていて、日本ではアフリカのことがあまり知られていないので、写真展でやりたいことがあるならぜひやってほしいとお願いしたんです。『野生の動物を撮りたい。野生動物にかなり近づいて撮影している』と言う彼に、じゃあ生きて帰ってきたらあなたの写真展をやりたいと(笑)」

:「野生動物に近づくには、透明にならなければいけないんです 。匂いがしないように風下に立つことも重要。舞妓に近づくのも同じで、彼はその瞬間にとけこむことが出来るのです」

 
これまでと異なるアングルで写された、
美しく謎めいた舞妓のリアルな生活

:「写真集には、舞妓の裏にある人間性や、彼と舞妓たちの無言の対話があります。その瞬間ではなく、関係性を撮っているところが好きです」

:「私にとって京都は遊園地のように色々撮りたいものがあるけれど、こと舞妓の世界はベールに包まれて、容易には裏を見ることのできないもの。今回の撮影を通じて、日本人でもなかなか見ることのできない世界を覗かせてもらい写真に収めました。日本語はできなくてもカメラを持っていれば、言葉を交わさなくても、心と心が通じ合えることもあるんです」

 
写真集のなかで、特別な作品は?

:「この写真を見ていると 、舞妓のナチュラルな姿なのかポーズをとっているのか分からなくなるが、そこがまたミステリアスでいい。舞妓の自然体の姿を撮るのに苦労したが、それでもこの写真はよく撮れたと思います」
 

:「彼は『写真集はオブジェだ』と言うのですが、たしかに、縁に入った日本の赤、そしてグレーが綺麗でオブジェのようです。表紙の彼女は目を閉じていて、彼の前で目を閉じるのはすごく危険なのに(笑)彼女が彼を信頼していたことが、この表紙に現れていると思います」

神秘的な舞妓の世界に引き込まれる

 

芸妓の吉華さんと、舞妓のとし恵美さん。

トークセッションの後には、京都の花街・宮川町から、舞妓のとし恵美さんと芸妓の吉華(よしか)さんがサプライズで登場。舞妓と芸妓の違いや衣装についてのお話、それぞれ踊りを披露し ました。

芸妓の頭はかつらなのに対し、舞妓は自分の髪の毛で日本髪を結い、一回結うと約1週間はほどかないので箱枕で寝ているのだとか。目を引く髪飾りは、四季折々の花の簪(かんざし)を付け、6月は紫陽花。

芸妓は大人の女性ということで短い袖ですが、舞妓は振袖で、幼さを出すために縫い上げがされています。「ぽっちり」と呼ばれる帯留めは、舞妓の衣装のなかで一番高価なものだそう。
 

吉華さんによる、お茶を汲んだり髪を梳かしたり、毎日の動きを表した振りが特徴の「宇治茶」、とし恵美さんによる、春夏秋冬を表現している踊りの「祇園小唄」をお披露目。パフォーマンスの後は、ゲストからの質問に答えてもらい、ミステリアスな舞妓の世界を覗き見た気分に。

 
――メイクなど出来上がるまでの時間は?

とし恵美さん(以下):メイクは1時間くらい掛かり、頭は1週間に一度しか結い直しがないので、毎朝梳き直しが1時間、着物は男衆(おとこし)さんという男性に着せてもらえるので10分くらいです。

吉華さん(以下):芸妓はかつらで梳き直しがないので、メイク1時間くらいでできます。


――海外出張はありますか?

:海外にも出張に行きますが、日本と海外の出張には移動時に大きな違いがあります。日本の場合は舞妓や芸妓の姿になって新幹線や飛行機に乗って移動しますが、 海外に行く時はパスポートの写真と違うので、そういうわけにはいきません(笑)


――プライベートでは洋服を着て出かけることはありますか?

:芸妓は、お稽古がない時は洋服を着ています。

:舞妓は頭が付いているので、コンビニやマクドナルド、スターバックスには行けません。お休みは月に2日あります。
 

クリエイティブでユーモアのあるトークセッションと、東京タワーを背景に披露された華麗な踊りで、とても刺激的で粋な時間を過ごしました。

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