「ON対決しかないんだ! 王を胴上げしろ!」
ダイエーに移ってしばらくたったある日、私は根本さんのお宅に文句を言いに押しかけたことがあります。そのとき、根本さんは一言もしゃべらずに私の不満に耳を傾けていました。
しばらく黙っていたのち、いろいろな方に電話をかけはじめました。その間2時間弱、私はただ椅子に座って待っていました。
ひと通り電話がすんだ後、私に向かって言いました。
「野球界を盛り上げるには、ON対決しかないんだ! まずは王を胴上げしろ! いいか! そのために必要だと思うことをしろ!」
根本さんにそう言われて、私は「はい!」とそれだけ言って帰りました。
覚悟を決めた日
優勝するために、王監督を胴上げするために、自分がしなければならないことをする。
覚悟を決めた日でした。あの日から、私は嫌われ役に徹したのです。
99年の春、根本さんは王監督が胴上げされるのを見ずに亡くなりました。
その夏、チーム内での話を聞いた妻から、「自分の努力をするだけにして。もう他の選手を怒るのをやめて」と懇願されたことがあります。
そのことを知った藤井は、「奥さん、すみません。もう少し我慢してください。工藤さんも厳しく言い続けるのは大変だと思います。必ず王監督を胴上げして、秋山さんと工藤さんのことも胴上げします」と妻に話してくれたそうです。