果された約束
王監督には、監督としての後ろ姿を見せていただきました。
96年5月のこと、日生球場で負けた後に事件は起こりました。私たち選手のふがいない試合に怒った一部のファンが、帰りのバスに生卵を投げつけたのです。
そのとき、バスの中でただ前を向いていた王監督の姿が、いまでも目に焼きついています。ホテルに戻っても、選手に対して何一つ文句も愚痴も言うことはない。
そんな姿を見たとき、「申し訳ない!」「何やってんだ、俺たちは」と思いました。
この人を男にしなくてはならない。何のためにここにきたのか。
そうして99年。リーグ優勝し、日本一になり、王監督を胴上げすることができました。
根本さんの存在、そして藤井の存在がなければ、夢はかなわなかったと思います。日本一になって、根本さんとの約束も果たすことができました。
別れと、ON対決と
99年オフ、再びFAで読売ジャイアンツへ移籍することになりました。
ダイエーから出るか出ないかで悩んでいるとき、王監督に相談させていただき、時間のないなか、これからの私のことを親身になって考えていただきました。
あのときのことは、いまでも感謝してもしきれないほどです。
そして、ファンの皆様にも、残ってくれ、出ていかないで、と17万6300もの署名をいただき、心から感謝しています。
ほとんどの方に、はがきにてお礼を出すことができましたが、一部の方は住所が変わっていたり、残念ながら読めなかった署名もありました。
2000年に巨人に入り、リーグ優勝して、日本シリーズでダイエーとの夢の対決となったとき、根本さんの言葉を思い出しました。
「野球界のために、ON対決を!」
根本さんの夢がかなって本当によかったと、一人胸のうちで喜びました。
ただ、藤井の死は自分自身受け入れられず、葬儀が日本シリーズ前だったこともあって複雑な思いで戦うことになりました。ダイエーのベンチを見たら泣いてしまいそうな思いをこらえ、試合に集中したくてもできない自分がいたのも確かでした。