株取引で必ず儲かる方法は存在しない。しかし、必ず損を減らせる方法はある。それは、売買時にかかる手数料(委託手数料)を減らすことだ。
2018年、スマートプラスが日本初となる手数料0円を実現した。SNS機能も搭載した、同社のユニークな株取引アプリ「STREAM」は、投資家たちにどんな影響を与えるのだろうか。
スマートプラスの創業者であり、現在はFinatextホールディングス 代表取締役 CEO/スマートプラス 取締役を務める林良太さんに話を聞いた。
取材・文/伊達直太、撮影/白井智
圧倒的な「何か」が必要だった
対面型の総合証券が主流だったころと比べると、ネット証券の普及によって株の売買手数料は大幅に安くなった。
しかし、それでも売買するたびにチャリンチャリンとお金は出ていく。
証券会社によって差はあるが、例えば50万円の株を買うと500円くらいの手数料がかかり、その株を売却するときにも同額の手数料がかかる。往復で1000円かかるなら、売買で1000円以上の利益が出なければ「手数料負け」だ。
「株取引はそういうもの」。長い間、投資家はそう思っていた。そんな中、手数料0円のSTREAMが誕生した。
STREAMは、スマートプラスが提供する株取引のアプリだ。
現物取引も信用取引(口座内の資金や保有株を担保として株を売買する取引)も手数料ゼロで、取引金額や取引回数の制限もない。
「我々はユーザーと同じ方向を向く金融機関を目指しています。そのための施策の1つが手数料ゼロです」
と、林良太さんはいう。林さんは、スマートプラスの親会社FinatextのCEOだ。

「金融機関とユーザーは、お互いが求めている利益やメリットという点で、従来から相反する部分がありました。株取引でいえば、取引業者は手数料収入を得たいと考え、ユーザーは手数料を抑えたいと思います。その関係性の中で生まれてしまう金融機関とユーザーの距離を近づけたい。そこを発想の原点として証券事業が生まれ、STREAMの開発につながったのです」
手数料ゼロは大きなインパクトだ。しかし、金融業界でユーザーの目を引くためには、それくらいのインパクトが不可欠なのだと林さんはいう。
理由は、スイッチングコストが働くからだ。スイッチングコストは、サービスを乗り換える際に生まれる心理的負担のことだ。
今使っているサービスより別の会社のサービスの方が良さそうだと思っても、時間がかかる、手間がかかる、面倒くさいといった後ろ向きな心理が働く。
それが重荷になるため「手数料が10円安い」くらいのインパクトではなかなか乗り換えの手続きに進まない。
「銀行にしても証券会社にしても口座を開くのは手間がかかります。大手の方がよい、有名なところがよいといった『謎の安心感』もあります。そういう環境の中で競争していくためには、サービス内容、コスト、マーケティング、人などの面で他社を圧倒できる何かが必要なのです」