『キッズファイヤー・ドットコム』ではクラウドファンディングでのホストの子育てとその行く末を描き、意外そうながらリアルな育児ワールドを展開していた作家の海猫沢めろんさん。現在は妻の学校の関係で熊本と東京を行き来しつつ、小学生の男の子を育てている。赤ちゃんのときとは違う「お世話から育児」になっていく時期も、親はまた色んな悩みを抱えるものだ――。ということで、パパであるめろんさんの連載「パパいや、めろん」第1回は、子どもに「おおきくなったら、なにもしたくない」と言われた時のお話。

 

パパいや、めろん?

「めろん先生。子育てエッセイやりましょう」

都内のシェアハウス「海猫沢めぞん」のリビングで、編集者さんがそんな提案をしてきた。

「子育てエッセイですか……」

子供は現在6歳。1歳のときのある時期に妻が倒れて、ぼくは地獄のようなワンオペを体験していたが、手がかからなくなった今では、それほど苦労もない。新鮮な時期でもない。実際に男親がやることはそんなにもない。どうしたものか……読者に伝えられる愉快な話があるかどうか、悩ましい。

タイトル、考えたんです……『パパいや、めろん』

パパいや、めろん……。

「やろうぜ!」
「えっ!?」
「タイトルいいからやります!」
「そ、そうですか……」

あっさりとやることにした(意思が弱い人間です)。
そんなわけで子育てにまつわるエッセイをはじめたいと思います。

「なにもしたくない」

ある日のことだ。

そろそろ子供に定番のアレを聞いてみるかな、と思いついた。親御さんたちならみんな心当たりがあるだろう。

・大きくなったらどんな仕事がしたい?

これだ。生まれてくる前のこと覚えてる? というのも定番であるが、そっちは以前聞いたら「なんにもおぼえてない」というロマンのかけらもない答えが返ってきたので、今回は現実的な問いかけだ。

この問いの返答によって実はいろいろなことがわかる。子供の成長度合い、今好きなことなどなど。子供の夢などすぐに変わってしまうものだが、とりあえずの指針にはなる。

そう思い、当時三歳だった息子に、
「お忙しいところすいません。大きくなったらどんな仕事がしたいですか?」
と聞いてみたところ、

「べんきょうもしごともなにもしたくない」

と即答された。

3歳は思ったよりも「子ども」になっていて、主張はかなり多くなっている。夢をつぶしたくない親心と将来を心配する親心、どうやって共存するか…(写真は本文とは関係のない3歳です)Photo by iStock