衰え廃れると、人は醜くなるのだろうか。不道徳で不健全なことは悪だろうか。迷ったり苦しんだりすることは、愚かな行為なのだろうか――? 美輪さんは、そんなすべての疑問に明確に回答する。答えはすべて「NO」であると。

良いことと悪いこと。幸福なこととつらいこと。美輪さんの人生には、正と負の出来事が、まるでシーソーのように交互に訪れた。“退廃の美” そのものである美輪さんが、今あらためて語る “人の世を生き抜く極意” とは?

FRaU 2017年 7月号掲載「美輪明宏が語る人の世について」インタビュー〈第2弾〉公開!

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悩みは、年齢とともに増えて当たり前。悩みがあるのは誠実に生きている証拠です

人間に、“悩み多き年頃” なんてあるのでしょうか。人生に悩み事はつきもの。歳を重ねるたびに、どんどん悩み事が増えてくる。それが人生というものです。確かに女性も30代ともなると、結婚やら出産やら、様々な選択を迫られるのかもしれません。でも、私からすれば30代の悩みなんてまだまだ。

人間誰しも小さい頃は、自分のことだけを考えていればいいので、悩みは少ないもの。それが、仕事をするようになれば仕事のこと。家族が増えれば家族のこと、子供が生まれれば子供のこと。親が老いれば親のこと。だんだん、関わる人が増えて、自分にできることも増えていく。関わる人が増えることは、人が人生を豊かにするために必要なことですが、当然、煩わしいことも増えていきます。それが、“正負の法則” というものです。

広大無辺の宇宙の中で、物事は全てプラスとマイナス、陰と陽、負と正、虚と実、上と下、長と短、表と裏など、相反する二つの要素で成り立っているのです。年齢を重ねれば、精神は充実していきますが、肉体は衰え、健康のこと、病気のこと、お金のこと、老後のことといった悩みも増えていく。

私は、もう40年以上、新聞紙上などで様々な人たちの人生相談に乗ってきました。でも、私自身は、人生で難題にぶつかった時に、深く苦悩したりすることはありません。それは、大変なことがあった後は、きっと嬉しいことが訪れるという “正負の法則” が、幼い頃から心と体に染み付いているからなのです。