(えび)(しじみ)ばかり食べているわりには健康そうだ

仙厓義梵 蜆子和尚(けんすおしょう)図(部分) 江戸時代後期(19世紀前半)幻住庵(福岡市)

蜆子は唐時代末の人。洞山良价(とうざんりょうかい)のもとで修行した後は、福建省の閩川(びんせん)で、来る日も来る日も蝦と蜆を獲って食べ、夜は白馬廟の、棺に入れる紙銭の中で寝ていた。

そんな蜆子の話を聞きつけてやって来た同じ門下の華厳休静(けごんきゅうじょう)が、「禅の祖師、達磨はなぜインドからやって来たのか」と問う。すると蜆子は、「神前の酒台盤」と、目の前にあった物の名前を口にし、華厳は深く悔いて退散した。禅の世界の有名な住人には、こんなわけのわからない人が多い。

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改めて考えれば、そういう人の様子を絵に表すのは難しいに違いない。頭の形、鼻と口の謎な描写。《豊干禅師・寒山拾得図屛風》の寒山拾得の顔にも似た、仙厓が編み出した「変な人」の描き方なのである。

一度会ったら忘れられない河童

小川芋銭(おがわ・うせん)〈河童百図〉幻  昭和12年(1937)茨城県近代美術館

画集『河童百図』の原画の一つ。「かっぱのまぼろし」と書かれている。ある日こんな幻を見たのか、いや、芋銭は河童の存在を信じていたのだから幻とは言わないはず、しかし、そもそも河童という存在自体が幻では……と、答えは見つかりそうにない。

とにかく、河童にも年齢や性格やそれぞれの事情があるらしい、などと想像させてくれる絵だ。河童の存在を疑う人に「存在しないことを証明できるのか?」と言った芋銭。へそまがりである。

「かわいい禅画キャラ」誕生

松花堂昭乗(しょうかどう・しょうじょう)布袋図(部分) 江戸時代前期(17世紀前半)

布袋は無垢な心を持ち、子供たちと遊ぶのが大好き。しかしあくまでも、「磊落(らいらく)で身なりを構わない中年男性なのに、純真」でなければならない。だから、先の雪村の絵のような「微妙な」表情に描かれるのである。

だが、この布袋には禅僧としての悩ましい姿はなく、純粋無垢なところだけを描いたよう。絵を見た人たちの「かわいい!」という歓声まで聞こえてきそうだ。

『へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで』府中市美術館 (編・著)(講談社)同展担当学芸員金子信久氏をメインの執筆者に、単なる作品解説にとどまらない、エキサイティングな日本美術評論としてお楽しみいただける一冊です。
 

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▼展覧会情報▼
春の江戸絵画まつり へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで

【会 期】2019年3月16日(土)から5月12日(日)まで
  ・前期 3月16日(土)から4月14日(日)
  ・後期 4月16日(火)から5月12日(日)
【休 館 日】月曜日(4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火曜日)
【開館時間】午前10時から午後5時(入場は午後4時30分まで)
【観 覧 料】一般700円(560円)、高校生・大学生350円(280円)、小学生・中学生150円(120円)
 注記:( )内は20名以上の団体料金。 
 注記:未就学児および障害者手帳等をお持ちの方は無料。 
 注記:常設展もご覧いただけます。 
 注記:府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」で無料。
【主催】府中市美術館http://fam-exhibition.com/hesoten/