2019.03.25

知っているようで知らない、天皇陛下の毎日の仕事

どのような仕事をどのように
今年4月の退位を控え、天皇皇后両陛下にとって最後の公務が続く。2009年に刊行された山本雅人著『天皇陛下の全仕事』によれば、1年のあいだにおこなわれる年間行事は710。その内訳や特徴とは? 毎日の仕事をやさしく解説した本書のなかの一部を特別に公開する。

回数の多い仕事は

現在、国事行為の内訳などの細かい数字が発表されなくなったため、筆者が独自にその部分の数字を入手し分析することのできる平成16(2004)年のデータからみてみよう。宮内庁が発表した同年1年間の天皇陛下のご日程から、すべての仕事・行事の数をカウントすると約710件であった(ここには、いわゆる〝お忍び〟での外出など宮内庁が発表していないものは含まれていない)。

「約」としたのは、厳密なカウントのしかたの難しいものがあるからで、たとえば、毎年1月2日、天皇・皇后はじめ各皇族が皇居に集まった一般の人たちの前に姿を見せ新年のあいさつをする「新年一般参賀」は午前と午後で計7回のお出ましがある。これを7件と数えるか、それとも全体をまとめて「一般参賀」として1件と数えるか、といった問題があり、厳密な数は出しにくい部分がある。このため宮内庁が発表した陛下のご日程(宮内庁ホームページ参照)から、1つの項目として記されているものを「1件」とした。

まず、天皇の行事の中で、どの行事が何回ずつ行われたのかを筆者が調べた「行事別ランキング」ともいえるのが次の図1である。

 

710の年間行事のうちでもっとも多いのは、国事行為関係(内閣関係)などの書類に天皇が目を通し決裁する「執務」で101件。2番目は、国内の要人や功績のあった人などに会う「拝謁(接見含む)」94件。

3番目は皇居内の清掃などのボランティアを行う皇居勤労奉仕団のメンバーに会ってねぎらうなどの「会釈」(宮内庁用語で「非公式に会うこと」をさし、一般的な会釈の意味とはやや異なる)で66件。

以下、4位が外国の賓客に会う「会見」「引見」(「会見」は大統領などの元首や王族に会うことで、「引見」はそれ以外〔それ以下のクラス、たとえば大臣や国会議長など〕の外国賓客に会うこと)の49件、5位は客を皇居や御所に招きドリンクや軽食をともにしながら語らう「お茶」「茶会」の42件、6位は、国事行為(外国の大使・公使の接受)の一環として行われる「信任状捧呈式」で36件、7位は、内外の客を招いて行う昼食会や夕食会である「午餐」「昼餐」「晩餐」「夕餐」の35件、8位は、天皇が皇居内の宮中三殿などで、国家や皇室の繁栄を願うなどの祭儀を行う「皇室祭祀(宮中祭祀)」の32件、9位が、出席予定のさまざまな記念式典や授賞式について事前に主催者や関係者を御所などに呼んで内容を聞く「説明」の26件、10位は「記念式典や授賞式、レセプションへの出席」で21件である。

ただ、このランキングもカウントのしかたにより変わってくる部分がある。

たとえば、2位の「拝謁」と3位の「会釈」は「人と会うこと」という点では変わりがなく、公式(拝謁)か非公式(会釈)かの違いである。さらには、国内の人と会うことを「拝謁」や「会釈」といい、外国の賓客と会うことを「会見」「引見」と使い分けているが、これも国内か外国かの違いで「会う」という点では変わりがない。これらをひとまとめにすると計209件となり、「執務」の2倍以上の数字となる(「お茶」「茶会」も飲み物や軽食のついた「拝謁」と考えてそれらに加えれば、数はさらに増える)。

また、6位の「信任状捧呈式」と14位の「認証式」(認証官任命式、15件)、さらには他の儀式も、「儀式」という点では同じなので、これらを合計して算出すると、70件以上となり、上位となってくる。

仕事の性質で分けると

そこで、年間710の行事を「人と会う」「事務処理」「儀式・式典出席など」「(進講・内奏など)説明・報告を受ける」「視察・(展覧会など)鑑賞」「祭祀」といった性質別に分けてみた(図2 参照)。その結果、「人と会う」が計374件と半分以上を占めた。次いで「事務処理」が101件、さらに「儀式・式典出席など」は76件、「説明・報告を受ける」59件、「視察・鑑賞」52件、「祭祀」32件だった。