中国の年金の将来は日本よりよっぽど悲惨だ

「中国の夢」は夢のまた夢か
北村 豊 プロフィール

年金問題が社会的関心に

中国では日本の年金に相当する国家規定の社会保険を“養老保険”と呼ぶ。

2018年公報によれば、2018年12月末時点における中国の“養老保険”の加入者数は、都市の就労者向けの「都市従業員基本養老保険」が4億1848万人で前年末に比べて1555万人増、都市の非就労者向けの「都市住民基本養老保険」が5億2392万人で前年末に比べて1137万人増であった。

これとは別に農民を対象とする農民養老保険の新制度が2017年から始まっているが、思うように加入者が増えないのか、2018年公報には言及がない。

2019年1月下旬、週5回発行の全国紙「毎日経済新聞」は中国の年金に関する特集記事を数度にわたって掲載し、庶民の関心が高い年金問題に一石を投じたが、その要旨を取りまとめると以下の通り。

 
1)“養老銭(年金資金)”は“救命銭(救命資金)”だが、ここ数年「年金資金は年金支給を賄えるのか」ということが社会で熱く議論される話題となっている。
目下、都市従業員基本養老保険基金の累計残高はすでに5兆元(約83兆円)に上り、全国平均で17ヵ月分の年金支給が可能な状態となっているはずである。
しかし、若者が納めた年金保険料を高齢者への年金支給に充当する「賦課方式」で運営されている年金制度の下で、東北地区など一部の一級行政区で支出が収入を超える問題が出現しているが、それはその年の年金保険料収入ではその年の年金支出を賄えないということを意味している。
2)年金支出が保険料収入を超えた一級行政区は、2014年には河北省、黒龍江省、寧夏回族自治区の3ヵ所に過ぎなかったが、2015年には黒龍江省、遼寧省、吉林省、河北省、陝西省、青海省の6カ所となり、2016年にはこれに湖北省が加わり7カ所になった。
このうち、黒龍江省の支出超過は2014年にはマイナス100億元(約1650億円)前後であったが、2016年にはマイナス320億元(約5280億円)まで拡大した。
3)2018年1月に中国社会科学院が発行した『中国年金精算報告2018~2022』には次のような記載がある。
すなわち、全国都市従業員基本養老保険の年度残高(年度基金収入と年度基金支出の差)は、2018年の2777億元から2020年の3291億元まで一気に上昇してから下降に転じ、2022年には2804億元になる。但し、政府の財政補助を考慮しなければ、2018年の残高はマイナス2562億元であり、2022年はマイナス5336億元となる。
4)年金扶養比率(現役世代である公的年金の加入者数を、年金をもらえる権利のある受給権者数で割った値)は近年継続的に下降しており、全国平均は2014年の2.97:1から2016年の2.87:1へと低下した。
東北3省の年金扶養比率は全国平均より低く、2015年の比率は、遼寧省(1.79)、吉林省(1.53)、黒龍江省(1.33)であった。この数字は2007年に超高齢社会に入った日本の年金扶養比率である約2.0よりも低く、極めて深刻と言える。

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