中国の年金の将来は日本よりよっぽど悲惨だ

「中国の夢」は夢のまた夢か
北村 豊 プロフィール

年金の南高北低

ところで、3月9日午後に開催中の第13期全国人民代表大会第2回会議の中で行われた吉林省代表団会議に参加した国務院総理の李克強は、「今年の『政府活動報告』で提起したように都市従業員基本養老保険の企業納入比率を低減し、企業の保険料納入負担を軽減すると同時に、年金は規定通りに満額を支給せねばならない」と述べた。

これは年金支給に遅延が生じている吉林省に対して苦言を呈する形で、同様の事態が発生している一級行政区に対して改善を呼びかけたものだった。

2018年7月1日から中国政府は「都市従業員基本養老保険基金の中央調整制度」政策を導入し、年金残高に余裕がある一級行政区の資金を残高不足の一級行政区へ補填することとした。

2017年11月に中国政府「人力資源・社会保障部」が発行した『中国社会保険発展年度報告2016』によれば、都市従業員基本養老保険基金の残高は、全国の一級行政区の平均が年金支給総額の17.2カ月分であるのに対して、一般に長江以南の地区では平均以上で余裕があるが、長江以北の地区では平均より大幅に低く、余裕がないのが実情である。

 

この李克強の発言より2日前の3月7日に記者会見した中国政府「財政部」部長の劉昆は、“養老保険(年金)”について次のように語った。

1)初歩的計算によれば、2018年の全国都市従業員養老保険基金は、収入が3.6兆元(約59.4兆円)、支出が3.2兆元(約52.8兆円)で、差し引きは0.4兆元(約6.6兆円)のプラスで、累計残高は4.6兆元(約75.9兆円)であった。
人口高齢化の加速と人口流動の不均衡などの要素の影響を受け、さらに従来は年金資金を一級行政区間で調整することができなかったことから、確かに一部の一級行政区では基金収支の不均衡圧力が比較的大きかった。
しかし、昨年「都市従業員基本養老保険基金の中央調整制度」政策を半年間実施したことで、2400億元(約4兆円)が調整額として22の一級行政区へ配分された。
2)“養老金(年金)”は政府によって徴収・管理されている中国国民の“養命銭(命を養うカネ)”であり、財政部のデータによれば、目下年金の合計残高は各一級行政区で17ヵ月分の年金を支払うことができるが、一級行政区間の残額には相違がある。
例えば、2017年における広東省の都市従業員基本養老保険基金の年間残高は1559億元(約2兆5724億円)だったが、黒龍江省は年間収支が収入を上回ったばかりか、累計残高がすでに底を突きマイナス232億元(約3828億円)であった。

劉昆は「都市従業員基本養老保険基金の中央調整制度」政策の実施で、“南銭北調(南のカネを北へ回す)”が行われ、年金支出が収入を上回る一級行政区の緊張を緩和することが出来たと述べて、中国の年金制度に問題がないことを強調した。

しかし、この“南銭北調”は年金の支出超過に陥った一級行政区を支援する急場しのぎの制度であり、年金資金を供与させられる長江以南の一級行政区にとっては不公平この上なく、彼らの反対を受けて将来的には同政策が取り消される可能性が高いと思われる。

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