中国の年金の将来は日本よりよっぽど悲惨だ

「中国の夢」は夢のまた夢か
北村 豊 プロフィール

富まずして老いる

中国4大証券会社の1つである“国泰君安証券”は2018年9月に「高齢化と年金資金の不足」に関する研究報告を発表したが、次のような内容を結論とした。

人口予測に基づき基本養老保険の資金不足を推測すると
・年金収入で支出を賄う充足率(政府の財政補填や年金残高を考慮しない前提): 2020年には80.6%まで低下し、2025年には63%まで低下し、2030年には52.4%まで低下し、2035年には45.3%まで低下する。
・年金資金の不足(政府の財政補填や年金残高を考慮しない前提): 2020年には1.1兆元(約18.2兆円)、2025年には3.8兆元(約62.7兆円)、2030年には7.9兆元(約130.4兆円)、2035年には10兆元(約165兆円)に達する。
・年金資金が底を突く時期: もし年金資金を他の事に流用することを考慮するなら、現有の年金資金は2022年に底を突く。もしそれと同時に財政補填(当面の毎年4290億元を維持するとして)を考慮すれば、年金資金は2023年には使い果たす。

国泰君安証券は上記の結論に、「現行の年金制度を改革しないならば」という条件を付けたが、それは従来から議論されている定年年齢の繰り下げなどの対策を早急に取ることが必要不可欠という意味だろう。

 

日本は2007年に高齢化率が21.5%となり超高齢社会に突入したが、この当時はすでに先進国の仲間入りをし、1人当たりの名目GDPも3万5342ドルで世界第22位であった。

これに対して、2018年時点の高齢化率が11.9%で高齢化社会に属する中国は、GDPは米国に次いで世界第2位だが、2017年の1人当たりの名目GDPはわずか8643ドルで世界第74位に過ぎず、依然として中進国から抜け出せないでいる。

ちなみに、2017年における日本の1人当たり名目GDPは世界第25位の3万8449ドルで、2007年より順位を落としている。

こうして見ると、日本の高齢者問題を小波とすれば、中国の高齢者問題は大波であり、将来的には抗い難い規模の大波となることが想像できる。

2011年11月に中国共産党中央委員会総書記に就任した習近平は、“中国夢(中国の夢)”の実現を公約に掲げた。

それは2021年の中国共産党設立100周年までに「小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的建設」を実現し、2049年の中華人民共和国の成立100周年までに、国家の富強・民族の振興・人民の幸せの実現を意味する「中華民族の偉大な復興」を目標としたものであった。

しかし、上述の年金問題だけを取り上げても人民の幸せを実現するのは容易ではないことが想像できるし、その対処を誤って、万一にも国民全体の年金支給が滞るようなことになれば、国家の安泰は保証の限りではなくなるのである。

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