2019.03.30
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2020年、インターネットはどうなる? 大企業独占の問題点と未来

SXSWで見えてきたこと
池田 純一 プロフィール

プラットホームの「公正性」

ここから第2の施策のような、より予防性の高い規制が提案される。この「エッセンシャル・ファシリティーズ」を新たに“Platform Utilities”と名付け、その判定基準として「年間収益が250億ドル以上」という、社外からも観測可能な数値基準を設けている。

つまり、プラットフォームを、電気やガス、水道のような“Public Utilities(公的/共通的サービス)”とみなすわけだ。

それゆえ、第三者の事業者が利用する上での「公正性」を担保するために、“Platform Utilities”を提供する事業者が直接プラットフォームを使ったエンドユーザー向けの商品やサービスを販売することが禁じられる。

年間収益を基準に選ぶのは、それが会計報告として開示される情報だからだ。もちろん、この250億ドルという具体的金額の妥当性は、実際にルールなり法律なりを策定する段階でより詳細な検討がなされることだろう。大事なことは、企業サイズに一定の上限=キャップを設け、それ以上には巨大化しないよう様々な措置を取る、ということだ。

逆に言うと、基準となる規模になるまでは、具体的なサービスとプラットフォームを一体の形で提供しても構わないということであり、むしろ、スタートアップにそのような可能性を与えることで、プラットフォームのレイヤーでもイノベーションの新陳代謝が起こる余地を残そうとしている。

この第2の施策で大打撃を受けるのは、おそらくはAmazonだろう。Amazonのマーケットプレイス部門が“Platform Utilities”として認定されれば、Amazonは自社プラットフォームの中で自社ブランドの製品を販売することができなくなる。

たとえるならば、Amazonはあくまでもショッピングモールとなる建物/ビル/不動産のオーナーでしかなく、そのビルの中で自社ブランドの店を開いてはいけないということだ。

Amazonに対する大批判

実はウォーレンは、この公約を3月8日、ニューヨーク市のロングアイランド・シティの講演会で発表していた。クイーンズにあるこの街は、昨年11月に、1年余りの検討を経てAmazonが第2本社(HQ2)の建設地に選んだ街だ。

だが公表後、激しい反対運動が繰り広げられ、結局、3ヵ月後の今年2月、AmazonはニューヨークへのHQ2建設計画を白紙に戻した。このHQ2反対論者のひとりがウォーレンだった(ちなみに現場で反対運動を盛り上げたのは近隣の選挙区選出の、前回も触れたAOC、すなわちアレグザンドリア・オカジオ=コルテスだった)。

 

HQ2建設への反対には、大きくは3つの立場があった。

第1に、かねてから疑問視されていたAmazonの労働条件に対する労組団体からの反対。

第2に、地元住民からの居住コスト増加の懸念(「ジェントリフィケーション」)であり、これはIT企業の関係者の大量流入によってサンフランシスコで生じた問題(「Googleバス問題」)と同種のことが生じるのを心配してのものだ。

最後に第3の反論は、AmazonがHQ2建設にあたってニューヨーク市から得た30億ドルにのぼる税控除や優遇措置に向けられたものだった。

特にこの3番目の批判は、地元だけではなく連邦議員からも疑念を示されたものであり、ウォーレンが反論したのもこの観点からだった。

つまり、Amazonのように直近で110億ドルもの利益を上げる大企業が、連邦税を一切払っていないにもかかわらず、HQ2建設にあたっては、逆に地方政府から優遇措置を得るとはどういうことか?さすがに社会正義にもとるのではないか?という反論だ。

今回のウォーレンのテックポリシー案は、こうしたAmazon批判に対して政治家が示した解決策の一つと言える。

実際、IT業界のBig4に顕著に見られる、独占/寡占の問題は、2019年現在、多くの政治家の関心を呼んでおり、ウォーレンの他にも、今回SXSWに参加した、フリアン・カストロやエイミー・クロブッシャー、ジョン・ヒッケンルーパーといった、民主党の中でも中道派とみなされている大統領候補者たちからも、早急に対応が必要なイシューとして認識されている。まさに「テックこそが問題」なのだ。

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