20代で渡仏し、20年住んだのちに家族で帰国、現在は日本在住のエッセイスト、吉村葉子さん。2007年に刊行し、文庫だけで37万部を超えたベストセラー『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』からオンラインで初めで記事を紹介する第2回。24時間営業をする、しないでも話題となっているコンビニエンスストア。フランスにはコンビニそのものが存在していないのだが……。
「かわいい」けど、その商品がなくても困らない
同じ歳の日本人とフランス人が同時に、同じお財布を使いはじめたとしたらきっと、日本人が使っているお財布の方がずっと早くダメになるだろう。それはフランス人の彼女たちがモノを丁寧に使うとか、モノ持ちがいいのではなく、お金を出し入れするたびのお財布の使用頻度に差があるからだ。お金の出番だけをみるとまちがいなく、私たちの生活のほうがフランス人の場合よりも多いからである。統計学者でも経済学者でもない、20年間に私が接してきた彼らの日常生活と、私たちのそれを比べただけのことである。
モノをふやさないというポリシーもまた、余計なお金を使わない秘訣だ。パリにも数多くの雑貨店があるし、カトラリーにしても食器にしても、世界の一流品がそろっている。日本の都市にある輸入雑貨店の商品にフランス製がかなりあることを思えば、現地にあって当たり前だ。

ところが彼女たちは、おいそれと雑貨を買わない。お財布を開ける前に、その商品がなくても困らないという結論に達するからだ。「アー、かわいい」とか、「ワー、ステキ」という感嘆詞は、彼女たちの購買欲につながらないのである。それよりも、また一つモノがふえたら、キッチンが狭くなる現実がすぐに彼女たちの念頭にあがる。
フランス人にとってお金は、世の中に散在するモノを買うためにあるのではなく、自分たちが生きていくために必要なモノだけを補充するためにあるのだから。
フランスにはコンビニはない。でも別に困らない。