2019.04.09

こんなにもたいへんな、天皇「国事行為」の中身

大人の身長を超える厚さの書類……

だが、国事行為は内容も形式も毎年の回数も“お決まり”なので、心身への負担を含めた内容の議論(負担軽減)などしようがないではないか、といったこともあり、あまり関心を持たれない。

日本世論調査会(共同通信と、その加盟38社で構成)が2016(平成28)年11月に行った全国面接世論調査で、天皇の活動を例で示したうえ、重要だと思われるものを2つ挙げてもらったところ、「外国訪問や国賓の接待など国際親善」が56%で最も多く、次いで「被災地の見舞い」が41%、「法律の公布など国事行為」は3番目で25%だった(小数点以下四捨五入)。明文でわざわざ定められた“仕事”がトップではなく3番目、この結果に、国事行為への関心の低さと、その実態が知られていないことを強く感じる。さらに、関心を持たれないもう一つの大きな理由として、さまざまな公的行為と違い、国事行為はあまり報道されないこともある。報道陣にあまり公開されていないからだ。

そこで、国民は憲法の条文に書かれている内容から国事行為をイメージすることになるが、全13項目の中には「内閣総理大臣の任命」や「衆議院の解散」などといったものもあるため、何年かに一度しかなく、しかも短時間で終わる儀式のようなもの、と思っている人も多い。

国事行為「国会の召集」に関係する国会開会式(photo by Gettyimages)

従来、国事行為については、詳しく解説した本がほとんどなかったことから、『天皇陛下の全仕事』では、特にその点に力を入れて調べ、執筆した。13項目の国事行為について、どんな種類の印を押すかなどの決裁方法について、おそらく初めて示した本だと思う。国事行為についてぜひ多くの人に知ってもらい、平成の天皇が譲位(退位)に至るまでには、国事行為でもかなり大きな心身のご負担があったことに思いをいたしてもらえればと思う。

新天皇と国事行為

新天皇は国事行為にはどのように向かい合われるのか。書類決裁について推測できるものとして、ご結婚10年に際しての文書回答(2003=平成15年)がある。その中で、妻であり、新皇后となる雅子さまから学んで感謝している点として、繰り返しの公務については当時、あまり資料に目を通していなかったものの、「結婚当初私が学んだこととして、丹念に資料に目を通すことが挙げられます」と述べられている。

平成の天皇同様、誠実に国事行為を行なわれることは間違いない。くれぐれもお体を大切に行なっていただければと思う。そして、平成の天皇には、激務で負担のかかったお体を少しでも休めていただければと思うとともに、末長いご健康をお祈りしている。