長年結婚や離婚の取材を続けているライターの上條まゆみさん。「子どもがいる」ことで離婚に踏み切れなかったり、つらさを抱えていたりする人の多さに直面し、そこからどうやったら光が見えるのかを探るために、具体的な例をルポしていく。
今回は離婚後、4年前に離婚し、息子を夫に会わせたくないほど嫌になってしまっていたというしばはし聡子さん(45歳)。元夫からのメールを捨ててしまっていた時代から、光が見えたきっかけとは。
売り言葉に買い言葉で離婚
しばはし聡子さんは4年前に離婚し、いまは中学2年生の息子と都内に2人暮らし。夫婦仲に波風はありながらも「仲よし3人家族」のつもりだったのが、ある日の口論をきっかけにあれよあれよと離婚となった。
「『出て行け!』と言うので、売り言葉に買い言葉で『あなたこそ出て行って!』と返したら、元夫は荷物をまとめて本当に家を出て行きました。当時小学4年生だった息子もその場にいました」
息子は、泣いている聡子さんに向かって「大丈夫、ママは間違ってないよ」と、笑顔をつくった。そして、自分に言い聞かせるように「間違ってない、間違ってない」と繰り返した。「私に気を遣ってくれたんだと思います」と、聡子さんは辛そうに言う。
調停で離婚が成立したのは、その日からわずか半年後。聡子さんにとっては、あまりにも急な展開だった。
聡子さんと元夫は同じ年で、23歳で出会って26歳で結婚した。30歳で子どもが生まれてからも共働きを続けた。
「彼は育児に協力的で、父親として何の不満もありませんでした」
しかし、息子が小学1年生になったころ、元夫が仕事で家を空けがちになってから、少々雲行きが怪しくなった。新しい仕事に夢中で取り組む元夫の姿に聡子さんは寂しさを覚え、ときには泣いて不満をぶつけた。そんな聡子さんを元夫は鬱陶しがった。
「彼は自分を信頼して、ドンと構えていて欲しかったんでしょう。それに私が応えられなかった。彼の仕事に一喜一憂したり、今日はどこに誰と行くのと聞きたがったり。俺はなんでも報告しなくてはいけない部下じゃない!と、はっきり言われたこともあります」
口論になると弁が立つ元夫へは言い返すことができず、泣くことしかできなくなった聡子さんは徐々に気持ちが不安定になり、夫婦の会話は減った。元夫が出て行ったのは、そんな最中でのできごとだった。

聡子さんは、離婚するつもりなどなかった。たぶん、その時点では元夫も。それで、聡子さんは、元夫にメールした。
「話し合いがしたかったんです。でも、メールだとお互い感情的になってしまい、うまく歩み寄りができなくて。そこで、第三者がいた方がいいと思い弁護士さんを頼りました。そうしたら、あれよあれよと調停に。私は修復を目指すための話し合いのつもりだったし、弁護士も私の気持ちを理解してくれていましたが、元夫はけんかを売られた、と思ってしまったみたいです。攻撃的な内容のメールが届くようになり、私は返事をする気も失せてしまい、すべてを弁護士に任せるようになりました。」